翻訳記事:Plants vs. Zombies 2 無料化の悲劇

これは翻訳記事です

 

以下の2つの記事はPlants vs. Zombies 2を全く逆の側面から描き出している:

言い換えれば、前者はこのゲームがアイテム課金で台無しになったと信じており、後者はEAが「ユーザーを怒らせるのを恐れて」手ぬるい事をしたと信じている。EAはPlants vs. Zombies 2を基本プレイ無料にした事で駄目にしたのか? それとももっと徹底的に改造すべきだったのか? 2つの記事はあたかも違う並行宇宙で書かれたかの様だ。

実際、両記事の著者は非常に異なる世界に住んでいる。ファラデイはモバイル向け戦略ゲームブログの筆頭、Pocket Tacticsの創始者である。コアゲーマーにとって基本プレイ無料はおよそ唾棄すべきものだ。カトコフはそれと逆に、Supercellの金のなる木、基本プレイ無料MMO “Clash of Clans”のプロダクトマネージャーだ。このゲームは大口顧客を誘い込んで何千ドルも使わせる事で悪名高い。

カトコフから見れば、Plants vs. Zombies 2は基本プレイ無料ゲームとして巨大なポテンシャルを持ちながらそれを発揮できていないのだ。それはEAのプレイヤーに金を使わせる努力が不十分だったせいである。それはつまり、このゲームは簡単すぎてプレイヤーがアイテムを買う必要が無いのだ:

残念な事にPlants vs. Zombies 2は馬鹿馬鹿しいほど簡単である。ステージをクリアするには欠片ほども努力を要さない。簡単で退屈である。Plants vs. Zombies 2はリアルマネーで消費アイテムを買ってステージを突破する事ができる。だがその需要が生じる為には、プレイヤーがあと少しでステージをクリアできそうになり、それでもあと一歩を消費アイテムに助けて貰わなくてはならないという状況が必要だ。低い難易度のために消費アイテムへの需要は伸びず、収益も低迷する事になった。

更に、このゲームは大抵の基本プレイ無料ゲームの様なプレイ制限要素が存在しない。これまた種々な強化やアイテムへの需要を鈍らせている:

Plants vs. Zombies 2には制限要素が無く、よってコアループが存在しない。このゲームに相応しいコアループは”Candy Crush Saga”に似たスタミナシステムだろう。スタミナシステムがあればこのゲームの収益はもっと増えたと言っても差し支えないと思う。スタミナ回復と、貴重なスタミナでステージに挑戦した後のパワーアップとで継続的に需要が発生したのではないか(ステージに挑むのにコストが必要であれば、それをクリアできない事態は避けたがる)。

EAは金を使う方法を色々用意した。プラントの解禁とか、特殊能力とか、追加のプラントフードとか……しかしゲームそのものがプレイヤーに金を使わせる様に作られていない。結果、本作はあっという間にiOSの収益トップ20から転がり落ち、現在では50位付近をうろうろしている。カトコフに言わせれば、これだけの宣伝と期待がかけられたゲームとしては失敗でしかない。

それと対照的に、ファラデイはこのゲームに失望している。商業的な都合でゲーム性が台無しになり、雰囲気が毒され、プレイヤーを満足させる事が重点項目ではなくなってしまった:

もちろんPlants vs. Zombies 2は面白くなる様に作られている。しかし同様に明白なのは、プレイヤーが適度に苛立って財布を開く程度にしか面白くしていないという事だ。プレイヤーは$5でプラントを早く解禁するなり、$6で新しいステージに行くなりといった形で金を使う。全く無神経で野蛮な仕組みだ。

初代Plants vs. Zombiesの独創性に対する賞賛の後、ファラデイはこう宣言する。「Plants vs. Zombies 2に関してEAとPopCapが犯した最大の間違いは、このゲームを鈍速の挽き臼に変えてしまった事だろう」。不幸にして、ゲーム時間を延ばしてゲーム内購入の余地を作る為にEAがやった事はこうだ:

最初の11面をクリアした後、Plants vs. Zombies 2は挽き臼の速度を弄り始める。ステージ11のエジプトをクリアするとそのワールドは終わりなのだが、次のワールドに進むにはそれまでの面を繰り返し繰り返し遊ばなくてはならない。そうやって星を集めて海賊の海を解禁するか、さもなくば$6支払うかだ。

両方の著者は事実認識について少々異なっている(ファラデイの言う星システムはカトコフが求めるコアループに近い。ゲーム内の関所がプレイヤーを先へ進ませないという仕組みだ)。どちらにせよ、ファラデイとカトコフの両方がPlants vs. Zombies 2を失敗と見なしているのはEAにとって頭が痛いだろう。このゲームが無料ゲームで金を稼ぐ人間も、元々のゲームのファンも満足させないとしたら、一体誰を満足させられるというのか? もしかするとこの苦い教訓は、元々のファンを失うリスクを冒すのであれば、何が何でも金を稼がなくてはならないという事かも知れない。

EAはコアゲーマーと大口顧客の板挟みになっている様だ。コアゲーマーは何を遊ぶかに関心があり、数十年に渡ってEAに富をもたらして来た。不幸なのは、大口顧客が他の会社をそれよりもっと金持ちにしている事だ。Supercellは2つの基本プレイ無料ゲームだけで30億ドル級の企業になった。2つのゲームは今や1日に250万ドルを生み出し、利益率は驚愕の75%である。これに対してEAの去年の利益率は2.5%に過ぎず、2つどころか遥かに多くのゲームを作っている。株主のいる会社として、一体どうしたらこの大口顧客を無視できるだろうか? 彼らを相手に商売をするSupercellに対抗せねばならないのに? 答えは「無視できない」であり、PopCapはもう初代Plants vs. Zombiesの様な物は作らないのである。

 

原文:http://www.designer-notes.com/?p=674