Hearthstoneの戦い方(1)

CCG “Hearthstone” に関して始めて2週間ほどで気付いた事を記録。


Hearthstoneはデッキを持ち寄って2人で戦うオンラインカードゲームである。デッキの組み方もさることながらプレイングが非常に重要である。この部分に関していくつかの覚え書きをしておく。

 

優位を積み重ねる

2人対戦ゲームの多くと同様、このゲームも小さな優位の積み重ねで勝利に至る。小さな駒で大きな駒を討ち取ったとか、相手の駒を只で取ったという様な「得」が積もり積もって勝敗を決する。ミクロな段階における工夫が最終的に大きな違いになる。

優位には2種類ある。仮にこれをリソースアドバンテージとテンポアドバンテージと呼ぼう。前者はいわゆる「駒得」であり、自分より相手に沢山のものを失わせて獲得する。例えば2マナの武器カード1枚を使って敵のミニオン(駒)2体を倒すとリソースアドバンテージが得られる。後者は自分のミニオンだけが盤上に存在している「時間」である。その間に相手のヒーローを一方的に殴ってHPを減らせる。

最終的な勝利はテンポアドバンテージを取る事で得られるが、そこに至る道筋は複数ある。それがHearthstoneを興味深い物にしている中核である。

 

アグロ:先に駒得、後で殴る

典型的なデッキの一類型がアグロである。軽量のミニオンを多く入れておき、早い段階でフィールドに展開する。それだけでなく武器や特殊能力付きミニオンを利用して積極的に駒得を狙うのが特徴である。敵が2体のミニオンを展開したら、自分は武器カード1枚を使ってその両方を討ち取り、更に1体のミニオンを展開する。こうすると盤上は自分のミニオンだけになるので敵のヒーローを勇んで殴り倒す。

「先にリソースアドバンテージを取り、それを利用してテンポアドバンテージを得る」これが基本原理だ。ローグはこの戦術の名人で敵ミニオンを片付けつつ自分のミニオンを展開できる。

 

コントロール:先に時間稼ぎ、後に駒得

アグロと対照的な類型がコントロールデッキである。コストの重い強力なカードは1枚で弱いカード複数枚と相殺できる物が多い。そうした巨砲を多数入れておき、使えるだけのマナが貯まる後半まで時間を稼ぐのである。

重い呪文やミニオンは軽い物に比べてコスト効率に優れる。Aのデッキには軽いミニオン、Bのデッキには重いミニオンが多く含まれているとすると、時間が経てば経つほどBは有利になる。挑発持ちを挟んで1ターン睨み合うだけで既に「得」をするのだ。

メイジはコントロール戦術の代表的な使い手である。フロストノヴァは敵全体を凍らせて1ターン動けなくする。カード1枚を使うのに敵ミニオンを破壊するわけではないから「駒損」であるが、代わりに敵のテンポアドバンテージを失わせている。一方的に殴られる時間が減るという事は殴り倒されるまでの時間が延びるという事であり、フレイムストライクなど盤面をまとめて片付けるカードを使うまでの時間が稼げるわけだ。凍結、アイスバリア、幻影の盾など「駒損になるが時間を稼げる」ギミックがメイジにはとても豊富に揃っている。

「まず相手のテンポアドバンテージを失わせ、後でまとめて駒を取る」これがコントロールの考え方である。

 

優位をどう計量するか

よい指し手とは優位を得る手である。では2種類のアドバンテージをどう計り判断すべきか。まずリソースアドバンテージは

  • カード1枚につき2点
  • マナコスト1につき1点

で考えるとほぼ近似値になる。これはチェスで駒の価値をナイトは3点ルークは5点と考えるのに似ている。0マナのミニオンカード「ウィスプ」と、パラディンがカード無しで2マナで生成できる兵士はどちらも2点の価値がある。ちょうど能力も同等である。これをメイジの2マナヒーロー能力で焼き殺すと2点と2点で等価交換になる。

1対1交換でも相手の方が点数が高ければ駒得である。例えば兵士が1マナのマーロックと相打ちになれば2点と3点の交換で1点の得だ。ポーン1個とナイト1個を交換したら駒得になるのと同じである。

特殊能力持ちのミニオンは本体と能力の価値を分割して考える。例えば1マナの軍曹を出して兵士を強化し、敵の熊(3マナ)と相打ちなったとしよう。後に残るのは能力を使い終わって2/1バニラと化した軍曹である。これは大体0.5マナ程度の強さだと考えると2.5点に相当する。残りの0.5点が能力のコストである。2点の兵士と0.5点の能力を合わせて5点の熊を討ち取ったから2.5点の駒得となる。ちょうどその駒得分の2/1ミニオンが盤上に残るという形でリソースアドバンテージを手にするわけだ。

点数計算に関しての補足

ミニオンや武器などの点数は「取得原価」で計算する。双方が同じだけのマナとドローを得ている以上、リソースのやり取りでどちらが優勢になっているかを判断するのにこれが便利だからである。1マナのミニオンは常にカード1枚+1マナで3点である。能力を放出した後の絞りカスに2.5点程度の価値があるとすれば、能力の取得原価は強さに関係なく0.5点である。そもそも能力付きミニオンは「駒」と「呪文」の抱き合わせ販売で安くなっており、両方を活かせる局面で使えばほぼ自動的にリソースアドバンテージを得られる仕組みである。これは能力を活かせない局面だとバニラより損をするというリスクと引き換えになっている。

 

テンポアドバンテージの計量

もう一方のテンポアドバンテージはヒーローのHPで計る。自分のミニオンを一方的に展開して敵ヒーローを5点分殴ったら5点のアドバンテージと数える。ただしこの「点」はリソースアドバンテージの点とは換算不能である。5点火力の呪文で相手の3マナクリーチャーを片付けるのと相手ヒーローを直接狙うのとどちらが良いかは盤面や残りのHPによって常に変わる。ゆえにこの2つの優位は本質的に別の資源である。

自分のHPを減らす行動(武器で殴る・インプを召還する等)は相手にテンポアドバンテージを与えるのと同じである。攻撃力3のミニオンを1ターン放置するのと自分のHPを3点犠牲にするのは同じ結果をもたらすからだ。逆にHPを回復したり装甲を上げるのは敵のテンポアドバンテージを相殺する形になる。

 

アドバンテージ間のトレードオフ

武器は往々にして、敵にテンポアドバンテージを与えるのと引き換えに多大なリソースアドバンテージを自分にもたらす。挑発持ちミニオンは価値の高いミニオンを守る(敵に駒得をさせない)ほか、敵のテンポアドバンテージを失わせる側面もある。

リーパーノームは1マナ2/1と2.5点相当の力しか無いが敵ヒーローにダメージを与えて2点分のテンポアドバンテージを作り出す。ゾンビチャウは1マナ2/3と4点近い力を持つがテンポアドバンテージを5点失わせる。テンポとリソースのどちらを重視するか、どの割合で交換するかはこのゲームで最も柔軟な判断を要する部分であり一概に正答を示す事は難しいが、「盤面の掃除に拘り過ぎてHPを削られて頓死した」といった状況が生じ得る事は念頭に置くべきである。

 

まとめ

このゲームは2種類の優位を積み重ねたり相互に交換して最終的に勝つ。どちらかの資源で一方的に損をしていたり、割に合わない比率で両者を交換していたら何かが間違っている可能性が高い。プレイングの継続的改善とデッキ構築の補助線としてこれらの基本原理を記しておく。後で上達したらまた見直す。

 

( ・3・)<始めたばっかりの頃にしか書けない事ってあるよね 後で見直すと気恥ずかしいよね>(・q・ )