Hearthstoneの戦い方(6)

CCG “Hearthstone” に関して気づいた事をその都度記録。


陸空の区分

このゲームの中心要素はミニオンである。盤上に自分のミニオンを並べて敵を殴り倒すのが全ての基本である。そしてまた、ミニオンは呪文や武器と決定的に違う点がひとつある。対戦相手からアクセスしやすいことだ。

このゲームは相手のターン中にできる行動が一切無く、特定のシークレットを伏せておかない限り発動した呪文を止める方法は無い。相手の手札を捨てさせる事もできない。武器を破壊する手段も限られているし、そもそも一撃目はどうあっても止まらない。ミニオン以外の攻撃手段は相手とのインタラクションが少なく、非常に邪魔されにくいのである。

これに対して速攻を持たないミニオンは場に出てから1ターン経過しないと仕事を始めない。つまり相手に最低1ターンそれを除去/無力化するチャンスが与えられる。ファイアボールを相手の顔面に向かって発射したらもう誰にも止められないが、マウンテンジャイアントが場に出たら次の相手のターンで除去される可能性がある。実際に顔面を殴れるのはその後だ。

そこでゲーム内の攻撃手段をミニオンという「干渉されやすい要素」と武器や呪文などの「干渉されにくい要素」に分割してみよう。そして干渉されやすい部分を「地上」、干渉されにくい部分を「空中」と考える。すると次の様な構図が浮かぶ。

  • 地上:ミニオン同士が殴りあう戦場
  • 空中:ヒーローという空中要塞が浮かぶ彼方

そして地上と地上、空中と空中、地上と空中それぞれの戦いを分類すると:

  • 地上戦:ミニオン同士の戦い
  • 空中戦:ヒーローによる直接打撃
  • 爆撃:ヒーローの呪文や武器によるミニオンの除去
  • 対空砲火:ミニオンによる顔面殴り

という形になる。これによってクラスやデッキの強み・弱み・相性などを説明可能である。

 

ウォリアー

  • 地上戦:全然ダメ
  • 空中戦:スゴイ
  • 爆撃:超スゴイ
  • 対空砲火:全然ダメ

典型的なウォリアーは重戦闘爆撃機である。1:2交換が簡単にできる斧、1マナ除去の処刑、5マナ全体除去の乱闘などミニオンの始末には事欠かない。またグロマシュのコンボによって14点ぐらいまでは簡単に相手の顔面にダメージを叩き込める。相手が干渉できない、ヒーローから直接出てくる攻撃手段が非常に豊富だ。

一方ミニオン同士の殴り合いは貧弱である。固有ミニオンの戦闘力が低く、使われるのは補助系やコンボパーツが中心である。フローシングバーサーカーや実質固有カードの増えるおじさんはあくまで「1ターンで敵ヒーローを殴り倒す」ためのミサイルであり、素出しして敵ミニオンと殴りあう事は稀だ。

こうした地上への対応力の高さと自身があまり地上戦を展開しない性質のため、ミニオン同士の戦いに重点を置いた戦車タイプに対してとても有利である。プリーストがクレリックを出せば斧で始末し、デスロードは処刑し、洗脳されるミニオンはそもそも出さない。一方フェイスハンターやテンポメイジの激しい対空砲火には押し負ける事が多く、顔面を徹底的に殴られると意外に早く陥落する。

 

プリースト

  • 地上戦:超スゴイ
  • 空中戦:ダメ(一部例外あり)
  • 爆撃:スゴイ
  • 対空砲火:ダメ

プリーストは地上戦の得意な戦車である。ヒールで自分のミニオンだけを生き残らせたり、1マナキャントリップで耐久力を増やしたり、敵を弱らせたり洗脳したりととにかく地上戦の選択肢が多い。一方こうした能力でアドバンテージを稼ぐには敵がミニオン同士の地上戦に付き合ってくれなくてはならず、全体的に攻撃力が低い事もあって相手の顔面を殴るのもそれほど得意ではない。

地上戦の強さからフェイスハンターなど対空砲タイプには有利に戦える。一方爆撃機に対しては出せる手が乏しく、ランプドルイドなど大型ミニオンによる地上戦タイプにもやや厳しい。

 

ハンター

  • 地上戦:まあまあ
  • 空中戦:スゴイ
  • 爆撃:まあまあ
  • 対空砲火:スゴイ

ハンターの最大の強みはヒーローパワーである。阻止手段のない2点ダメージはHPを回復できないデッキにとっては迫り来る死そのものだ。瞬間的なバーストダメージは乏しいが継続的な顔面殴りでは他の追随を許さない。

この強みを素直に活かしたのがフェイスハンターで、駒損は厭わずとにかく顔面に打撃を加える。他のヒーローであればあと1点が削り切れずに逆転負けする局面でもハンターならば確実に討ち取る。展開の遅いデッキは何もさせずに殴り倒してしまう。一方速攻持ちなどミニオン同士の殴り合いには弱い物が多く、戦車に対しては不利になる。

一方、堅実なミニオンを並べて盤面を取るミッドレンジハンターも存在し、こちらは地上戦がかなり強い。その代わり性質が戦車に近くなった事で爆撃機タイプには盤面を処理されてしまう場合が多い。

 

メイジ

  • 地上戦:ダメ
  • 空中戦:スゴイ
  • 爆撃:スゴイ
  • 対空砲火:まあまあ

メイジの強みは豊富な呪文である。フロストボルトやファイアボールは明らかに強く、ミニオンの除去に使っても相手の顔面にぶつけても有効である。ミニオンも呪文と相互作用する物が多くいかにも魔法使いだ。一方殴り合いの性能はそれほど高くなく、普通に展開しただけでは押し負けてしまう。

この問題を2つの工夫によって解決したのがメックメイジやテンポメイジだ。即ち「除去と展開を同時に行う」「相手の除去を邪魔する」である。

ブラストメイジは自身も相応の大きさを持ったミニオンでありつつ、登場と同時に4点火力を撒き散らす。フレイムウェイカーとポータルの組み合わせも召喚と砲撃を同時に行う。アプレンティスが居れば1マナで3点火力を浴びせつつ、余ったマナでミニオンを展開できる。こうして敵ミニオンを除去してしまえば殴り合いは回避できるわけだ。

またアノイオトロンやミラーイメージによって盾を作り敵ミニオンを押しとどめておくのも重要な戦術である。本命ミニオン同士の潰し合いを遅らせつつ相手の顔面を殴り、ファイアボールによる即死圏まで持っていく。武器を持ったヒーローが相手ならスノウチャガーやフロストボルトで凍らせる。こうした継続的な対空砲火によって遅いデッキや地上戦の苦手なデッキを叩きのめすのである。

これに対し、フリーズメイジは強力な除去で前半を凌ぎ、後半になったら強力な火力呪文で相手の顔面を粉砕するという素直に強みを活かした構成である。分類は戦闘機に近い。

 

ウォーロック

  • 地上戦:スゴイ
  • 空中戦:ダメ(一部例外あり)
  • 爆撃:まあまあ
  • 対空砲火:スゴイ

ウォーロックの強みはヒーローパワーだ。カードを1枚引けるのはほとんどの局面でアドバンテージを生み出す。敵ミニオンと1対1で交換しても自分はカードを補充できるし、マウンテンジャイアントなど手札枚数参照系の大物を素早く繰り出す事もできる。以前は大物中心のハンドロックと小物中心のズーロックが分かれていたが、最近は両方のいいとこ取りをしたハイブリッドが多くなった。

資源基盤が潤沢なお陰でまともに戦えば相当に強いが、HPを消費してしまう関係で顔面を集中的に殴るタイプには極端に弱い。また攻めも守りもミニオンに頼る割合が大きく、除去を山積みしたデッキには封殺される。

 

ドルイド

  • 地上戦:スゴイ
  • 空中戦:スゴイ
  • 爆撃:ダメ
  • 対空砲火:ダメ

典型的なドルイドは2つの強みを持っている。マナ加速によって大型ミニオンが敵よりはるかに早く出て来ること。そして自然の力と野生の唸りによる14点コンボである。ヒーローから直接出て来るダメージ源は相手の顔面に向かい、ミニオンを止めたり殴り合ったりするのは自分のミニオンという風に比較的役割分担がはっきりしているのが特徴だ。除去呪文も一応あるものの、大型ミニオンや多数が並んだ場合など対応できない局面がかなり多い(少なくともTGTリリース前の現時点では)。

戦車と戦闘機の両方の性質を持っている事から爆撃機タイプにはかなりのプレッシャーを与えられる。自然の力コンボのせいで即死圏がかなり広く、除去の過程でHPをあまり消耗できない。またミニオンを盤面に残しておく事自体にかなりのリスクがある。一方動き出しの遅さから速攻デッキに殴り倒される事もしばしばある。

 

シャーマン

  • 地上戦:ダメ
  • 空中戦:スゴイ
  • 爆撃:まあまあ
  • 対空砲火:超スゴイ

シャーマンはドルイドとはある意味で逆の構成になっている。ミニオンはミニオン同士の戦いには弱いが顔面を殴る能力が非常に高い。2回攻撃とフレイムタントーテムを組み合わせると恐ろしい速さで敵のHPが溶けてゆく。一方敵のミニオンを始末するのはヒーローの仕事であり、3マナ除去のヘックスや各種の武器を用いて確実に仕留める。空対地と地対空という役割分担になっているわけだ。

と、理屈の上では強力なのだが現環境では除去がうまく機能していない。アースショックはルートホーダーの天敵だが最近はあまり使われない。パワーメイスは3マナという重さのためその後に出るミニオンを討ち取りにくい。サンダーストームは取りこぼしが発生しやすい。またメイジと違い敵の除去を妨害する手段が豊富なわけでもなく、爆撃機タイプに対してしばしば攻め切れずに終わる。

こんなわけで構築戦で困難な状況にあるシャーマンだが、2回攻撃やブラッドラストの爆発力はとても大きな魅力だ。敵は序盤の対処に失敗すればそのまま棺桶へ超特急でぶち込まれる。メタが長期戦中心になり、軽い除去をあまり持たないデッキが増えれば急速に暴れ出すだろう。

 

パラディン

  • 地上戦:スゴイ
  • 空中戦:まあまあ
  • 爆撃:まあまあ
  • 対空砲火:まあまあ

武器・除去・ミニオンがバランス良く揃っており、ディバインシールドのお陰で地上戦もかなり得意だ。顔面に撃ち込む強力な呪文は乏しいが武器で少しずつ削り取れば蓄積ダメージはかなりのものになる。

典型的なアグロパラディンは対空砲に除去耐性を加えた形で構成されている。ディバインシールド・デスラトル・サイズ増加・単純な頭数の多さなどを組み合わせてミニオンでも武器でも討ち取られにくい盤面を作り、できるだけ長い時間にわたって顔面を殴り続けるというものだ。たとえミニオンを一掃されてもディバインフェイバーで手札を回復でき、持久力の点でも優れている。

ただし単純な速度という点ではテンポメイジやフェイスハンターよりやや落ちる。またパラディン自身に瞬間的な大ダメージ源が無い事もあり、敵に与える脅威はマイルドになっている。

 

ローグ

  • 地上戦:全然ダメ
  • 空中戦:超スゴイ
  • 爆撃:スゴイ
  • 対空砲火:ダメ

現環境での典型的なローグはオイルローグである。敵の脅威を除去で凌ぎつつスプリントでカードを引き、材料が揃ったら一気に即死級のコンボを繰り出す。相手にとってHP20は全く安心できる水準ではない。

こうしたコンボデッキに共通の弱点は、序盤からプレッシャーを与えられると対処に忙殺され必殺技の準備ができない事だ。デッキ内のかなりの割合を最終ターンに使うカードが占めているという事は、相手よりも有効牌を引く確率が低いという事である。もちろんコンボパーツを眼前の脅威への対処に使う事もできるがそうすると今度は勝つ手段が減ってしまう。飛車を防ごうとしても上手く行かないが、王手飛車取りをかけ続けると存外脆いというわけだ。

 

 

(´・ヮ・)<どうして拡張が出て内容が陳腐化する寸前に書くのか理解に苦しむね