ゲームの代金とは

iOSアプリ市場において、有料アドオン付き無料アプリは有料アプリより遥かに収益が高いという話が以下に紹介されている。

http://www.sirlin.net/blog/2012/3/6/gdc-2012-the-day-before-day-1.html

ゲームに金を払う方法は色々ある。店に行ってパッケージを買うのも楽しいが、他の方法も考察してみよう。

 

1.遊ぶ度に払う

ビデオゲームの誉れ高き伝統はアーケード筐体である。コインを1つ入れると1回遊べる。実にシンプルだ。この方式の良い所は、顧客の受ける利益と支払う金額とが釣り合うという点だ。沢山遊べば沢山払う。少し遊べば少し払う。とんでもなく駄目なゲームに当たっても、損はコイン1個である。短所は遊ぶ度に少額の決済が必要になる所だ。ゆえに買い手と売り手が金銭をやり取りできる場所でしか成立しない。

 

2.ずっと遊ぶ権利を買う

パッケージ入りのゲームはこのパターンである。店に行って、1回代金を支払い、その後はずっと遊べる。この方式なら何度も決済をしなくて良い。インターネットの力を借りずとも、買い手と売り手が遠く離れた場所に存在できる。接触するのは最初の1回だけで宜しい。

問題はいかさまに弱い点である。この方式だと買い手が中身を知る前に決済を終えるため、ゴミの塊をそれらしい箱に入れて売ってしまう事が可能になる。そして実際そうなった。現在は情報の流通が増えて問題が緩和されたとは言え、基本的にはレモン市場である。

 

3.一定期間遊ぶ権利を買う

1と2の中間形態である。いわゆる月額課金。本来はオンラインゲームのサーバ経費として徴収されたのだが、後にゲーム自体の代金もここに含められる場合が増えた。ただ、複数の月額課金を同時に維持すると無駄に金がかかる。

 

4.もっと遊ぶ為に払う

Great Little War Gameを制覇した?では追加マップをどうぞ。85円です。追加のミッションやキャラクターに代金を払うDLCはあちこちで見られる。体験版もある意味ではこのカテゴリに入る。体験版はステージ2までしか遊べないとしたら、ステージ3以降が有料コンテンツになっているのと同じ事である。

 

5.ゲロを片付ける為に払う

こんなゲームセンターを考えてみよう。コインを入れる必要は無く、無料で好きなだけ台を利用できる。ただし椅子にはゲロがぶちまけてあり座ると尻が濡れる。店に金を払うと乾いた椅子と取り替えてくれる。

馬鹿馬鹿しいと思うかも知れないが、オンラインゲームやモバイルアプリでは似た様な事が起きている。アバターの移動速度が耐えられない程遅く、金を払うとようやくまともに歩き出す。インターフェイスに必須の機能が無く、金を払うと使いやすい版に変わる。画面の3分の1を広告が埋めており、金を払うと消えてくれる。

問題点は明白だ。我々はゲロまみれの椅子に座って「ああ、良い椅子とゲームだね!ゲロが無ければもっと素敵に違いない、金を払うよ!」と言うのだろうか?

 

6.勝つ為に払う

いわゆる「500円で宝箱を開けると0.2%の確率でレア素材ゼニウムが出ます!それを合成すると0.008%の確率で名刀銭金丸+69が出来上がります!」の類。魔剣を手に入れたら貧乏なプレイヤーをバッサバッサと斬るのである。これは要するに全てのプレイヤーから勝率を少しずつ税金として徴収し、専売公社を通じて売っているのと同じだ。「裕福なプレイヤーに負ける」「金を払う」という2通りの支払い形態があるので様々なニーズに応えられる。ゲームの競技性を腐らせるのが問題点。

 

これ以外にも蒐集物を揃えるとか、友達からの社会的圧力に応えるとか、色々な理由で支払いをする事がある。しかしそれらはゲームの本質からはやや離れてしまうのでここでは論じない。どの方式にせよゲーム体験に対して支払いをしているのは同じだが、それをどの様に計量するかが異なるのである。

 

( ・3・)<まあ誰かからプレゼントして貰うのが一番楽しいんですけどね