カジノとゲーム

20XX年。ある日本のSNS運営会社がオンラインカジノを開設した。会員は瞬く間に増え巨大な収益を上げるも、やがて社会問題化。当局の指導が入り株価は暴落した。

これは実話である。「ソーシャルゲーム」を僭称するオンラインカジノが日本には相当数ある。300円入れてスロットを回し、出て来た景品を他のプレイヤーに売る。パチンコ屋の三店方式と同じである。ゲームとは本質的に無関係だ。実際こうしたオンラインカジノの成長はゲーム業界の市場動向とは無関係に動いており、むしろパチンコ業界と競合している。

しかしこうしたカジノ企業もBlizzardという巨人の前では霞んで見える。Diablo 3のリアルマネーオークションハウスがこのほど開業した。プレイヤーは各種のアイテムを現金で相互に取引できる。売り上げはPaypalアカウントに引き出せる。運営元は成約と引き出しの際に手数料を徴収する。これが生まれた経緯はどうあれ、既に十全なカジノの機能を備えているのである。優れたアイテムを発見すれば高く売る事ができる。となればキャラクターの戦闘能力を高めたい。その為の先行投資として高価な装備品を買っておこう。「金を得る為に金を投じる」という発想がここでは可能である。そして賭場は客同士で金をやり取りするものであり、胴元は場代を抜くのが仕事である。

勿論オンラインゲーム界には遥か昔からRMTが存在し、それを運営元の管理下に置く形でRMAHが始まったのである。BlizzardがRMTを導入した訳ではない。有限かつ有用な物には値段が付く。時間を投じてアイテムを獲得するというシステムがある以上、プレイヤーがそれを売り買いするのは避け難い。

カジノはカジノとして節度を守って楽しめば良い。「ゲーム」として究極の回答はGuild Warsである。このゲームではPvPキャラクターを作ると最高の装備が無限に生成できる。有料装備品も見た目を変更するだけで強さには影響しない。勝敗を決めるのは技量だけで、キャラクターの強さは全て公平である。これなら売買対象物自体が最初から生じない。