翻訳記事:勝つ為に戦う(23)

これは翻訳記事です

 

チェスプレイヤー:ハワード・スタントン(1810-74)

この人物を蛇と形容するのは公平を欠くと思われるかも知れない。何しろ彼はいくつもの偉大な業績を持ち、そもそも今日の標準チェス駒は彼が発注した「スタントン式」である。彼は29年間に渡って有名な絵入りロンドン新聞にチェスコラムを連載していた。世界で最初に電信チェスをやったのも彼だ。おまけに当時第一級のシェイクスピア研究者で注釈付き戯曲も出版していた。疑う余地なき重要さと影響力を備えた人士である。

だがその一方、「チェス世界王者」を自称してもいた。出版上の影響力を悪用して、今日ならばトラッシュトーク(相手を混乱させる舌戦)と呼ばれる様な手を使っていた。口頭と紙面の両方でだ。負けた相手には横柄で敵対的な態度を取った。有利になる為にあらゆる盤外戦術を駆使したと言われ、対戦相手を太陽の真正面に座らせた事さえあった! こうした水面下の戦いで最も有名なのが全米王者ポール・モーフィーとの論争である。自称世界王者に挑戦する者が現れると、スタントンは仕事を休んでまで地球の裏側には行けないと言って断った。ポール・モーフィーはこれを欧州への招待状と受け取った。相手のホームで負かしてやるべく遥々欧州に渡り、どうにかスタントンに会って戦いを挑んだ。ちなみにモーフィーはこれまで誰かに直接挑戦した事はほぼ皆無である。

スタントンはまたも釈明をこしらえて試合を先延ばしにした。モーフィーが強く要請するとスタントンは相手のオープニングを研究するのに1ヶ月欲しいと言い、モーフィーも合意した。だがそれでもスタントンは試合そのものには結局同意しなかった。スタントンはそれから出版の力を使い、モーフィーが約束の場に現れなかったとか、必要な掛け金を持って来なかったとか、厚顔無恥なる嘘を撒き散らした。良しにつけ悪しきにつけ、この手の人間はどんなゲームコミュニティにも現れる様である。そして常に誰かの怒りを爆発させるのだ。

 

ストリートファイタープレイヤー:ジェフ・シェイファー

シェイファーはストリートファイターコミュニティの中で常に論争に身を投じている。彼は論争すべき問題を発明する。ロスにいる他のプレイヤーがどれだけ強いか、特定のキャラクターが他のキャラクターにどれだけ優位かといった事だ。この手のダイヤグラムは毎週変わる。そしてシェイファーは常にあらゆる問題に対して狂ったスタンスを取る。誰もが彼を憎まずにはいられない。彼の攻撃はほとんどがロス以外のプレイヤーは下手だと「証明」する事に焦点があり、個人攻撃で炎上させるのを楽しんでいる。ある時など北カリフォルニアのプレイヤーを全く下手だと言い放ち、「霊安室に転がる事すらできないだろう」と凄まじい悪口を浴びせた。しかも霊安室の綴りが間違っていた。

プレイヤーとして見ればシェイファーは上手いが一頭地を抜くほどではない。彼の功績はただ黙って座っている事を不可能にした点にある。人々を激怒させ、遠征させ、練習させ、大会の参加へ駆り立てた。そのうちに彼はストリートファイター界を去った。奇妙に聞こえるかも知れないがこれはコミュニティにとっての損失だと私は思う。

 

原文:http://www.sirlin.net/ptw