楽しい敗戦

対戦格闘ゲームは2種類に分かれる。バランスへの不満が噴出しているゲームと、誰も遊んでいないゲームとである。そして「スーパーストリートファイターIV AE」は前者に属するらしい。このキャラは強過ぎる。あの技を弱体化しろ。こっちは強化してくれ。長い陳情の列がどこまでも続く。

こうした不満は全て一語に集約できる。「勝たせろ」だ。自分の使っているキャラクタが強すぎてつまらない、という不満は存在しない。勝っている限りは満足なのだ。

誰かと誰かが戦うごとに、同数の勝利と敗北が生成される。これは対戦ゲームが背負っている宿命だ。となれば、敗北を楽しい経験に変える事ができればユーザ体験は大幅に向上する筈である。何しろ敗北は戦いの半分なのだ。以下に楽しい敗北の条件を挙げてみよう。

 

・理由が明確に示される

「チャンスの時に必殺技を出し損ねた」とか「敵への対処で間違った技を用いてしまった」といった明確な理由があっての敗北はゲームへの不満に繋がりにくい。勝利を1点、敗北をマイナス1点とすると、「勝つチャンスのあった敗北」はマイナス0.5点くらいである。

 

・次は勝てると思わせる

人は希望があれば前に進める。敗因を分析して次の勝利に繋げる事ができるなら、敗北はもはや失敗ではない。勝利まであと一歩という地点ならば尚更だ。「あと一手で勝利に達する地点」までは楽に到達できる様になっていると宜しい。例えばメックアリーナは2アウトまでは楽に取れる。止めの3アウト目が難しいのだ。

 

・技量の近い相手とマッチングする

全体としての結果が敗北であっても、個別の小競り合いではいくつか勝っている場合もある。総論敗北各論勝利。そうした小さな勝利も慰めとして重要である。

 

・言い訳を用意する

「今回は乱数に恵まれなかった」「相手のラッキーヒットだった」「向こうの方が段位が上なんだから仕方ない」ユーザは色々と負けた言い訳をする。それによって敗北の不満はいくらか解消されている。運の要素を多少入れておくのは良い考えだろう。

 

負けても楽しいゲームを作ろう。