ゲンスルーは何故あんなに強いのか

世のSRPGというジャンルはそもそもの初めから瑕疵を抱えている。プレイヤーは自分の兵士を戦場で自由に動かせるだけでなく、彼らを成長させる事もできる。つまり一つのゲームの中に二つのパートがあるのだ。そして困った事に、そのどちらかで成功すればするほどもう一方のゲームバランスが崩れるのである。

「ファイアーエムブレム 聖戦の系譜」は親から子への継承を主軸に据えている事もあり、慎重に案配すれば素晴らしい強さを持ったスーパーユニットを生み出す事ができた。そしてそれは敵とゲームバランスを諸共に葬り去った。ユニットを鍛えるパートで成功する事によって、ユニットを動かすパートの難易度が大幅に下がるのだ。上手なプレイヤーほど簡単な課題を与えられるという逆転現象がここに生ずる。

ここで漫画の世界を見てみよう。「ドラゴンボール」は強さのみが支配する空間だった。強大な敵を打ち倒す方法はただ一つ、それよりも強くなる事だけだ。だからこそ登場人物達は修行に打ち込む。これは成長パートのみのゲームに似ている。

「JOJOの奇妙な冒険」は対照的に、作戦を工夫する事で敵のトリックに対処する。主人公達の戦闘力が劇的に高まる事は無い。あくまで所与の戦力で戦い抜くわけだ。これは戦術パートのゲームに対応する。

ところが「HUNTERxHUNTER」はその両方の要素を持っている。主人公達は修行に励んで強くなる。同時に、戦術を工夫して格上の敵を倒そうとする。ゆえにこの作品の敵役は異常に強い。主人公が強くなった上に知恵も絞ってようやく倒せる水準である。そうでなければ話が成立しない。

成長と戦術の要素を持つゲームは、その両方で最大限に成功した場合とてつもなく強い敵が出て来なければ釣り合いが取れないのである。それゆえ構造的に難易度の問題を抱えてしまう。成長パートが単なる難度緩和装置になってしまうのはよくある事だ。

一つのゲームに主軸は一つ。大黒柱は一本にしよう。

4 thoughts on “ゲンスルーは何故あんなに強いのか

  1.  なるほど。目から鱗でした。
     自分はSRPGが好きでよくやるんですが、1周目は普通にプレイして2週目以降はそこに「縛り」を設けてやっています。キャラメイクが出来るゲームなら1つの職業を縛ったり、回復を縛ったり。敵を強くする事は出来ないので(例外もありますが)、自分を弱くして難易度を上げるという事を気づかずやっていたんですね。
     大抵のSRPGが1周目より2週目の方が遥かに面白いと思う理由がスパ帝さんの文章を読んではっきり分かりました。ありがとうございます。

  2. 戦闘分野と成長分野とあるが、戦闘の結果は予めどれだけ戦力を整えておけるかが成否の7~9割を占める。無論歴史上圧倒的数の差をひっくり返した例は存在するが、極めて少数である。つまり実践とは戦力差の1~3割を決める配分でしかなく、そのバランスは戦闘分野と成長分野の重要度のバランスに一致する。
    以上の事を踏まえるとSRPGというゲームは瑕疵を抱えている訳ではなく、SRPGというゲームにプレイヤーの期待が捻じれて注がれているだけに過ぎない。
    SRPG本来の楽しみ方とは、苦戦するだろうと設定されたマップに対し、自分の蓄積してきた戦力で如何に楽に戦うか、それによって自分に愉悦感・優越感を得られるかという自己満足に他ならず、キャラゲーとしてみるならば、自分の好きなキャラ・ユニットがツエー出来るかを楽しむゲームである。

  3. お初です。
    なるほど……メジャー作品の特性というか、特徴はそういう風になりたっていたと、
    納得することが出来ました。
    ハンターが面白い理由もそこにある気がしないでもないですね(-w-

  4. スパロボなんかはいい例ですけどね。
    勘違いしたユーザーの意見を、さらに勘違いして受け入れた結果生まれたのが「F」。
    レベルアップ・フル改造が前提で、その難易度がプレイスタイルを限定してしまった。

    ここで言う「上手なプレイヤー」ってのは、TRPGでいう所の「和マンチ」なのだけど、
    「上手」とか「楽しむ」と言うのと、「システムをハックする」のは違う。
    メーカーさんはその辺りをきちんと理解して、「Fの悲劇」を繰り返さないでほしいものだ。

    アムロは雑兵の攻撃をちゃんとかわすし、ビルバインは強い。
    良いじゃないか、それで。

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