翻訳記事:勝つ為に戦う(6)

これは翻訳記事です

 

勝つ為にどこまでやるべきか?

他のソフトウェアと同様、ビデオゲームにもバグがある。非電源ゲームでさえ、デザイナーの予期しない相互作用が見つかる事もある。もし上級者が勝つ為にあらゆる事をするとしたら、こうした不具合も利用するだろうか? 答えはイエスだ。プレイヤーはデザイナーの意図を酌んだりしない。どの技が「フェア」でどの技がそうでないか、どの技が仕様でどの技が不具合かなど一切気にしない。気にするだけ無駄だ。プレイヤーが気にするのは、どの技が勝利に繋がりどの技がそうでないかだけである。

不可解な事に、世の中にはプレイヤーがデザイナーの意図を神聖視してくれると思っている様なゲームもある。そして実装上のルールとは別に、意図された通りのプレイをしてくれると期待している。これは根本的に間違った考え方だ。そしてそういう間違いをしているMMOは非常に多い。”World of Warcraft”を例に挙げよう。プレイヤーは街中で屋根に上がる事ができる。またプレイヤーは街中で他のプレイヤーと戦う事ができる。しかし屋根の上にいる時に他のプレイヤーと戦ってはいけないのである。やろうとすると警告を受ける。実はこれは2005年11月3日21:44(PST)までは合法であり、その後違法と見なされる様になったのだ。またプレイヤーは同じモンスターを毎日毎日倒し続ける「ファーミング」でゲーム内通貨を稼ぐ事ができるが、「やりすぎ」てはいけない。一線を越えるとファーマーと見なされアカウント削除の目に遭う。更にモンスターの視線を遮るとなかなか追って来れなくなり、その隙に仲間に倒してもらう事ができる。これは上手なプレイか、それともアカウント停止案件か? アカウント停止案件である。モンスターに追われた時、湖に飛び込んで向こうが諦めるまでやり過ごす事ができる。これは上手なプレイか、それともアカウント停止案件か? こちらは上手なプレイである。こうした恣意的なルールの網は「雑魚」の作るお手製ルールと大して変わらない。

私はこの点に関して注意を喚起しておきたい。良い競技ゲームはこの様な物であってはいけない。合理的ゲームはルールをきちんと組み込み、違法な行動はそもそもできない様にしておくべきである。合理的なゲームであっても、大会ではしばしば特別ルールが用いられるが、その場合でもルールは可能な限り短く明瞭なリストにまとめる。世の中には「楽しみ」のためだけのゲームもある。そういうゲームは「勝つ」事が許されなかったり、まともな大会を開く事が不可能である。ゲームとしては楽しいだろうが、この本で扱う範囲からは外れる。

それではプレイヤーは勝つ為にどこまでやるべきか? プレイヤーは、大会において合法な行動全てを駆使して勝利の可能性を最大にすべきである。どの行動が大会で禁止されるべきかという問題はまた後の節で論じる。ここでは次の様に結論しておく:大会でやって良い事はゲームの内である。以上。誰かがバグを利用すると、他のプレイヤーが「チート」だとか「卑怯」だと文句を付けるが、これは本人は全く悪くない。彼は使える手段全てを駆使して勝利を目指しているのであり、パンチを引っ込める義務は無い。苦言は大会の運営(あるいはプレイヤーコミュニティ)に対して向けるべきである。問題は大会でその行動が許されるかどうかだ。ここを間違えているプレイヤーは非常に多い。

原文:http://www.sirlin.net/ptw