あともう1ゲームだけ…

ゲーム開発は円環のプロセスである。まず設計があり、次にプロトタイプを作り、そしてテスト。得られた結果をもとに設計を修正し、実装し、再びテスト。この繰り返しだ。

テストは開発の肝である。そのゲームを何回テストプレイしたかがバランスとリプレイ性に直結する。ブラウザ戦略ゲーム「すとすて」は3万回のテストプレイの末に完璧なバランスを獲得し、優れた知性が存分に暴れる事の出来る広大な演舞場となった。

テストの回数は可能な限り増やさねばならない。繰り返し繰り返し、様々な人に遊んでもらう。そこから得たフィードバックによって仕様を改善し続ける。コンセプトが凡庸なゲームも十分な回数のテストを経れば良作となる。

そこで問題になるのがテストにかかる時間だ。6時間かかるゲームをテストするには午後いっぱいを空けておかなくてはならない。10分で終わるゲームならその間に36回テストできる。短いゲームは現実的な時間の内に完璧に仕上げる事ができるが、長いゲームを完璧に仕上げるには雨だれが石を穿つ程の時間が必要だ。

良いゲーム、バランスの取れたリプレイ性の高いゲームを仕上げようと思ったら、1ゲームにかかる時間は極力短くせねばならない。長くても30分程度だ。とりわけ無用な時間食いは徹底的に排除しよう。山札のリシャッフルは他のギミックで代用できないか?裏返しのカードをめくって確認する手間は省けないか?必要以上に複雑な計算や手順をユーザーに押し付けていないか?

名作”Civilization”はその中毒性ゆえに「あともう1ターンだけ」という名言を生み出した。それと同等の魅力を持ち、かつ1プレイの短いゲームがあったとしたらどうだろうか?プレイヤーは一体何と呟くのだろうか?答えは同様のコンセプトを持つ戦略ゲーム「すとすて」にある。あるすとすてプレイヤーはこう呟いた。

「あともう1ゲームだけ」