翻訳記事:勝つ為に戦う(21)

これは翻訳記事です

 

アタッカー

チェスプレイヤー:フランク・マーシャル (1877-1944)

マーシャルはペトロシアンよりも古い時代、「ロマン派」に属する。他のロマン派と同じく、マーシャルは閃きの一手と熱い戦いに生きていた。彼は防御をほとんど捨てて乱戦に持ち込み、天才的な手を繰り出して勝利を掴んだ。苦境から脱する妙手のゆえに彼は「偉大なるペテン師」と呼ばれた。彼は勝利の為と同じくらい、観客とスリルの為にも戦った。1909年から1935年にかけてアメリカチャンピオンの座を維持した。

私はいつも自由奔放な局面を好み、相手を可能な限り早くチェックメイトにしたいと思う。攻撃は最大の防御なりという古い諺の通りさ。

—フランク・マーシャル

 

マーシャルの奇手はまるで棋譜の誤植みたいだ。

—チェスプレイヤー、ウィリアム・ネイピア

 

マーシャルほど勝つ事だけでなくチェスそのものを楽しんだチャンピオンはいないだろう。彼は妙手のチャンスを逃すぐらいなら敗北を選んだろう。

—チェスグランドマスター、アンディ・ソルティス

 

ストリートファイタープレイヤー:アレックス・ヴァイエ

ヴァイエはあらゆる意味で「恐るべき」男だ。強く、自信に溢れ、体格もよい。ヴァイエの持ち味はその攻撃的なスタイルで、防戦一方の亀を攻め切ってプレッシャーで圧倒する。そのスタイルは誰にも真似できない。彼の技は彼がやった場合にしか上手く行かないのだ。彼は予測不可能な事を予測不可能なタイミングで行い対戦相手を困惑させる。そして反射神経とリスクを取りたがる傾向でも有名だ。一体何がいつ繰り出されるのか相手は決して分からない。次第に彼のボタンの押し方さえ恐ろしくなって来る。彼のプレイスタイルと物理的な存在感はゲームの決着のはるか前に相手を心理的に圧倒する。いや時には始まる前に。

だがここで、私がヴァイエの本当の秘密と思う物を明かそう:彼の苛烈な攻めと冒険はたいてい幻影なのだ。貶しているのではない、褒め言葉だ。オーティズが恥も外聞も無く逃げ回るのに対し、ヴァイエは果敢に攻めるかの如く見える。次々に技を繰り出し相手の周りを飛び回る。いかにも攻めている様だが、実は安全な所で込み入ったダンスを踊り相手を誘っているのだ。彼が多くのプレイヤーよりもリスクを取る傾向にあり、優れた反射神経を持っているのは間違いないが、リスクに見える物の多くはその実「織り込み済み」なのだ。何故なら彼は対戦相手が特定のタイミングで特定の行動をする様に追い込んでいるのだから。相手のする事がほとんど確実に分かっていれば、速い反射神経も過度のリスクも必要無いのである。

ヴァイエは狡猾に「偽の攻撃」と本当の攻撃を混ぜて繰り出す。本当のリスクを取る時もあれば、単に他のプレイヤーの悪い癖につけ込む時もある。彼が格闘ゲーム界でも最高クラスの「恐怖のオーラ」を纏っているのも納得だろう。

原文:http://www.sirlin.net/ptw