知恵の試練場

スパ帝国は「考えれば良い結果が出る」ゲームを作ろうとしている。勝率を上げたければ全力で知恵を絞り、創造性を発揮するしか方法は無い。裏口も抜け道も無し。精神力を用いる重量挙げだ。それがデザインにどのように反映されるか以下に述べてみよう。

 

・常に正しい選択肢は無い

「毎回チャリオットを量産すれば勝てる」とか「ひたすら飛び道具を連発すれば勝てる」といったお手軽な定石は存在すべきでない。何故なら、そういった定石を覚えたり用いる事にはほとんど思考力を必要としないからだ。思考力を用いない手段によってゲームの勝敗や結果が改善されるべきではない。

 

・対戦条件は公平に

100メートル走は全ての競技者が同じスタートラインに立つ。ハンマー投げは全員が同じ場所から投げる。同様にして、スパ帝国製ゲームは対戦者の条件を出来るだけ公平にしている。例えばメックアリーナは機体の強さが大体同じだ。その様にしてこそゲームはマインドスポーツたり得る。公平なゲームに繰り返し勝つ事は優れた知性を担保する。100メートル走で金メダルを取る事が足の速さを担保するのと同じだ。世の中のアイテム課金ゲームは、金を払った競技者にだけ10メートル先からスタートさせる徒競走である。その様にして得られた金メダルはゴミだ。

 

・勝敗の恣意性を無くす

「ディプロマシー」や「汝は人狼なりや?」はスパ帝国からは生じ得ないゲームである。何故ならそれらは「誰を勝たせるか」という点で恣意性を帯びているからだ。イギリスがフランスを攻めるかドイツを攻めるか、村の中で誰を首くくりにするか、そうした判断には常に好悪の感情がつきまとう。スパ帝国は人の機嫌を損ねない才能ではなく、論理や確率を理解し応用する才能を褒賞する。2人用のゲームが多いのは、誰かを道連れに自爆する様な戦略を取らせない為である。

 

・数字は小さく

3000点のライフとか2500の戦闘力は良くない。10点のライフや8の戦闘力は良い。何故か?それは前者が無駄に記憶容量を占有するからだ。プレイヤーの思考力は創造的な決断に全て振り向けられるべきであり、退屈な計算や記憶によって負荷をかけるべきではない。何か数字を組み入れる場合は12以下、それが無理ならせめて20以下にする。

 

ゲームは実体経済に大きな貢献をなし得る。「優れた知性を選別する」という方法においてである。それに熟達している事が何らかの優れた形質を担保する様なゲームを作っている。