翻訳記事:勝つ為に戦う(22)

これは翻訳記事です

 

マニアック

チェスプレイヤー:ダヴィド・ヤノフスキー(1868-1927)

このグランドマスターはチェスの一側面に取り憑かれていた。即ちビショップだ。

彼にはゲーム上のちょっとした悪癖があった。自分のビショップを大事にし過ぎるのは有名な弱点だった。しかもそれを誰よりも自信満々にやるのだ。ついでに彼は自分の容姿にも自信満々な伊達男だった。

-ヤノフスキーの友人、フランク・マーシャル

ヤノフスキーはビショップが大好きで、対戦相手もそれは重々承知していた。彼は様々な打ち手と盤面を編み出してビショップの力を最大に活かした。ひとつの側面に取り憑かれたプレイヤーにとって、その側面を誰よりもよく理解する事になるのは必然だ。大好きな部分に関しては世界最高のプレイヤーすら上回るのだ。ただし肝心の武器を失うと弱ってしまう。ヤノウスキーの対戦相手は、ビショップを守る為には他の駒を犠牲にしなくてはならない様な攻撃を仕掛ければいいと気づいた。そのうちアメリカではビショップを「ヤノフ」と呼ぶのが流行り始めた。

 

ストリートファイタープレイヤー、デイヴィッド・サーリン

そして著者である私自身の登場だ。私はオーティズの様な辛抱強さでも知られていたが、むしろ有名だったのは同じ技を繰り返し繰り返し出す事の方だ。まず100回でも繰り返し出せるような技を探し出す。お仕置きを恐れずにずっと出し続けられる技が見つかればこの上なく嬉しい。そういう技が存在するのはゲームデザインとしてどうかとも言えるが、それはプレイヤーである私にとってはどうでもいい事だ。「想定通りに」「楽しく」プレイする義務など負ってはいない。ヤノフスキーはビショップを使い続けてその駒が「ヤノフ」と呼ばれるに至ったが、私はストリートファイターでローズを使い続けた挙句に私自身が「屈中パン」と呼ばれるに至った。

理論上、もし特定の技を相手が止められなければ私は読み合いに付き合う必要が無い。自分の次の行動が読まれる心配もしなくていい。次に何をするかお互い承知だ!少なくともその技を出している限り負けないのであれば問題はないし、それを破れると証明する義務は相手にある。

私は操作が下手糞で反応が遅い事でも有名で、それを補う為にはタイミングを上手く読まねばならなかった。ストリートファイターアルファ2(ストZERO2の北米版)ではかなり活躍できた。いくつもの大会で優勝したし、ヴァイエとチョイを除けばアメリカのどんな選手にも安定して勝てた。ただ、他のゲームでは上級者のグループには入ったもののもっと強いプレイヤーの陰に隠れてしまった。

このプレイスタイルから学んだ教訓はこうだ。ひとつの側面を極めるだけでも相当上まで行けるが、頂点までは行けない。アルファ2の時ですらヴァイエやチョイとの頂上決戦では「同じ技をひたすら出す」作戦を放棄せざるを得なかった。別のキャラクターでオールラウンドな戦い方をする必要があったのだ。チョイの凄さに触れるにつけ、私は重点を他へ移して「すべてのボタンを使う」様になった。

 

原文:http://www.sirlin.net/ptw