これは翻訳記事です
無敵と「野獣」
チェスプレイヤー:ホセ・ラウル・カパブランカ(1888-1942)
もし勝つ為に戦ったプレイヤーがいるとすれば、それはカパブランカだ。彼はチェスの教科書を読んだりオープニングを研究する事を拒んだ。チェス王者の態度として普通なら考えられないが、カパブランカは普通ではなかったのだ。
17歳の時、当時の世界王者ラスカー博士が多面指しをした相手の中に彼はいた。そして勝っていた。3年後、彼はアメリカに渡りそこで多面指しの新記録を打ち立てた。しかも速度と結果の両方で。最初の10セッションでいきなり168連勝し、最終的に703勝12敗19引き分けという戦績に達した。そして1909年、彼はアメリカ王者のフランク・マーシャルに8-1(引き分け14)で圧勝する。
快進撃はその後も続く。生涯で567試合をこなし、負けたのはわずか36試合だけ。10年間全く負けなかった時期すらあった!
全ての面で、カパブランカのスタイルは直截にして無欠であった。彼は一手一手を最適解を探すパズルの如く扱った。序盤から中盤はわずかな陣地や駒得で満足し、終盤になるとそのわずかな優勢を一気に勝利へと変える。これが持ち味だった。
私は常に注意深く指し、無用な危険は冒さない様にしている。私のやり方は正しいと信じている。余計な外連味はチェスの本質に反するのだ。チェスは賭博ではなく、純粋に知的な戦いであって、明確なルールと論理に従うのだ。
—ホセ・ラウル・カパブランカ
哀れなりカパブランカ!汝聡明な技巧家にして哲人にあらず。チェスにはただ一つでなく多くの正解があると悟れぬか。
—第5代チェス世界王者、マックス・エーワ
引き分けと負けの試合は収録しない事にした。この本の目的にそぐわない。
—ホセ・ラウル・カパブランカ、チェスの本にて
非常にありそうなのは、カパブランカは自分が考えた以上に良い手があると想像できないのではないかという事だ。そして彼は往々にして正しい。
—チェスマスターにしてInside Chess誌の編集者、マイク・フラネット
カパブランカ氏はチェスの歴史上最も偉大なプレイヤーだったのではないか。
—第11代にして歴代最年少チェス世界王者、ボビー・フィッシャー
ストリートファイタープレイヤー:梅原大吾
日本では「ウメ」、アメリカでは「ダイゴ」、そしてどこへ行っても”The Beast”と呼ばれる。梅原大吾はこの地球上で最高の格闘ゲームプレイヤーだ。例えるなら、チョイを3乗して全ての感情を取り去った様な存在だ。操作精度や細かい知識の面では日本の同輩たちに遅れを取るが、勝つという一点に関しては他の追随を許さない。しかもただ勝つだけではない。完膚なきまでに打ち破る。ある大会において、私の目の前でアメリカ人プレイヤーが徹底的に負かされた。そしてそのすぐ後に同じキャラクターで私が当たったのだ。何をしてはいけないか予習できたはずなのに、あたかもリプレイの如く同じ目に合わされた。
他のどんな格闘ゲームプレイヤーにも増して、梅原は読みの力を持っている。即ち対戦相手の考えを知る力だ。もし相手が次に何をするか全て分かっていたら、難しいコンボも細かい知識も最早必要ない。彼は「危険な」立ち回りを次々に繰り出すが、その殆どを通してしまう。またもや読みだ。相手が何をするか分かっていれば危険など無いのだ。彼との対戦で、私は「正しいタイミング」で攻撃を出さない様によくよく気をつけた。そうすれば読まれにくい筈だと思ったのだ。だが実際には、正しいタイミングで攻撃しないのは殆ど不可能だったのだ。10年の経験がこの瞬間に攻撃を出せと命令するのだ。心の中を覗かれている感触が生まれ、己の中でコンマ数秒の逡巡が始まる。そして次の瞬間にはもう倒されているのだ。梅原とチョイはどちらも、競技ゲームには個別の知識より重要な根本的技能があると教えてくれる。梅原が勝つにはそのゲームが「得意」である必要すら無い。彼は梅原だ。だから勝つ。
超能力とか、超自然の力を使うプレイヤーなんかいるはずが無いと思っていたんだが…正直言って…恐れ入った。彼はそうかも知れない。
—アメリカGGXXチームメンバー、「蒼き混沌」ロメル・シャヒード
“. . .” —梅原大吾
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