チョキチョキチョキの次は?

対戦カードゲームYomiは優れたマインドスポーツである。三すくみのカードを同時に伏せ、勝てば更に追撃できる。効率計算と読み合いによる白熱の勝負が展開される。

効率は別の機会に譲るとして、読み合いとはどういうプロセスだろうか。「相手はさっき打撃を使って来た…だから次は打撃は無い…と見せかけてまた打撃…?」という様な出口の無い逡巡だろうか。否。理性と根拠に基づく知的作業である。

初心者が最初に採用するのは、相手の行動を予測してそれに対応するというシステムである。「相手はここでガードしてくるな…よし投げだ」という具合である。読み合いのゲームだと言われれば相手を読もうとするのは素直な反応と言える。

次にもう少し上達すると、効率計算による行動決定を習得する。「ここでガードして手札を増やしておかないと後々困るな」「投げは1枚しか無いから温存しておこう」「相手はヒットポイントが残り僅かだから必殺技で削ればいい」という具合だ。これはゲームシステムへの理解から生じる。

そして更に上達すると、相手の読みを散らす事を覚える。例えば筆者が作ったシステムは、まず効率計算によって行動を一旦決定し、次にサイコロを振るというものだ。例えばガードを選択した場合、4・5・6が出ればそのままガード、2・3が出れば打撃、1が出れば投げを選ぶ。乱数を導入する事によって相手は読みを絞れなくなるのである。

そしてこれら3つのメタシステムは三すくみの関係を成している。「効率」は手が読まれやすいため「読み」に弱い。「読み」は「散らし」に振り回される。「散らし」は「効率」に期待値で負ける。よって相手が「読み」を採用していれば、「散らし」によって非常に高い勝率を維持できるわけだ。

となれば当然、相手の採用しているシステムを見極めてそれに打ち勝つシステムへ切り替えるという知恵が生ずる。札効率を重視する相手なら読みシステムを使うべきだし、癖を読もうとするプレイヤーには散らしが効果的だ。

「賭博黙示録カイジ」の主人公はチョキを4枚連続で出すという奇策によって戦果を得た。これはグーチョキパーの戦いではなく、それより一段上のメタシステム同士の三すくみで勝ったのである。「カードのバランスを良くしておけ」というのが効率。「チョキチョキチョキと来たからもうチョキがない」というのが読み。「まさに泥沼」というのが散らしである。

人間が繰り出すジャンケンは一見バラバラだが、それを選ぶ論理は存外首尾一貫している。そこを見極め切り替えるのが読みのゲームである。

エフェサスとシラキュースの戦い

#12 デルタのバックストーリー。

 

プレイヤーは憎み合う二つの都市、エフェサスとシラキュースの公爵である。ゲームの目的は、傭兵団を雇って戦闘を繰り返し敵の国力を0にする事である。

カード内容:騎兵、マスケット兵、矛兵各6枚。指揮官アンティフォラス2枚。

年の初め、各々の公爵は5つの傭兵団を抱えている。その内の2つに退職金をやって解体し、残り3つは解雇する。解雇された傭兵団は相手の公爵の下へ流れて行く。流れて来た傭兵団3つと新たに探し出した傭兵団2つの内から3つ選んで軍団を編成し、秋の決戦に臨む。

決戦に勝つと敵の国力を減少させる。猛将アンティフォラス兄弟は威力を2倍にするが、騎兵・マスケット兵・矛兵の揃った布陣ならばその突撃を跳ね返せる。二人のアンティフォラスは瓜二つで混乱を招くので一つの軍団に同居する事はできない。

国力が一桁まで減少すると「ピンチの怒り」が発動。呪術師ピンチのまじないにより敵に与える損害が2倍になる。