月刊スパ帝国 Vol.15

ゲーム付きミニ雑誌「月刊スパ帝国」Vol.15の紹介


Vol.15はダイス乱闘ゲーム「ころころシアム」を収録。更にデザインノートやゲームレビュー、中国おもしろ話などを雑多に詰め込んだ一冊である。

内容:

  • 2〜4人用ダイス乱闘ゲーム「ころころシアム」
    • ダイス
    • HPチップ
    • 攻撃値カウンター
    • レファレンスシート兼HPカウンター×4
  • 20ページ+表紙のオフセット誌
    • Minecraftプレイ日記「ぐう凡鉱山採掘記リターンズ」
    • ゲームレビューコーナー
    • デザインノート
    • お便りコーナー
    • ゲームが強くなる100の知恵番外編「チャンス(確率)をつかめ!」
    • 中国サーガ

 

コラム:中国サーガ

2006年ごろ中国の上海にいた。当時はまだ規制がゆるく種々なインチキ商売が町にはびこっていた。例えば海賊版DVD屋である。アメリカや日本や韓国の映画DVDが全て1枚10元(150円)で売られていた。会員カードを作ると更に1割引である。露店もあるが多くは店舗を構えており、同じ通りに密集するので道1本がまるごと海賊通りと化す。これはある日当局の査察が入って一夜にして全て消滅した。

海賊版PCソフトもある。Officeやらゲームやらはもちろんの事、Windows 96とかWindows 99と称する謎の製品も売られている。これは95や98にサービスパックを適用した物らしい。また「アクティベーション免除版」Windows XPというのもあった。アウトローなのに気遣いが細やかである。

物理的な偽物もある。中国の工場で作る偽ブランド製品はしばしば西側世界で問題になるが、変わり種で「本物の偽物」というのもある。これは正規の委託生産工場がこっそり多めに作って闇市場に横流しするのである。何しろ本来の生産者であるから物自体は本物と全く同じだ。造幣局が贋金を作る様な話である。

偽領収書屋もいる。中国の領収書は国家の発行する印紙であり、10元とか100元とか固定の金額が書かれている。店はこれを買って来て、顧客の求めに応じて判子を押して渡す。不正会計を防止する当局の苦慮である。にもかかわらず使用済み領収書を回収して売る者が後を絶たぬ。駅の出口あたりに立ってダフ屋よろしく片手に領収書の束を持ち声を掛ける。しかもそれが大勢いる。中国語で領収書をファーピャオと言うのだが、「ファーピャオファーピャオファーピャオファーピャオ」と寸分違わぬリズムで全員が連呼するのである。

偽ファーピャオ屋の横には往々にしてメロン屋とパイナップル屋がいる。中玉を8つぐらいにカットした物を串に刺して売っている。これまた大勢いる。そしてカットの仕方も刺している串もそれを入れているバケツの色さえも同じである。上海は暑いので蝿がたかる。そこで片手に持ったタオルを左右に振って追い払うのである。このタオルをメトロノーム代わりにして「イークァィイークァィイークァィイークァィ」とこれまた寸分違わぬリズムで連呼する。イークァィというのは1元の事である。果物1切れが15円だからだいぶ安い。ただし衛生管理状況は不明である。

観光名所に行くと露店がたくさんあって本やアクセサリを売っている。そこで買った毛沢東語録は乱丁本であった。子供の拳ほどあるクロム鋼製の球が1元で売られていたので買ってみた。本当に何という事も無いただの球であった。よくよく検分すると小さな凹みがあったので恐らくベアリング工場の不良品だろう。翡翠の小物もよく見かける。翡翠はジュダイトとネフライトの両方を指すがこの場合は価値の低いネフライトである。定価は1個10元だが値切ると1元まで下がる。一事が万事この調子で随分混沌とした町であった。ただし2010年の上海万博以後は当局に「掃除」されてしまい、怪しい連中は鳴りを潜めたそうである。

 

続きは雑誌で読もう。1部¥950+送料。注文はストアから。

R&Rステーション秋葉原店でも店頭販売!

手妻師と対局!メックアリーナ2013(その1)

突発企画! ゲストを迎えてゲームをしよう!


今回ゲストに来てくれるのは手妻師の藤山晃太郎氏。国内外で活躍するマジシャンにしてMSX時代からのハードコアゲーマーである。筆者とは2009年からのゲーム仲間。

「寝てたらゲームと生活両立できないがな」

公式サイト:http://www.wazuma.jp

 

今回遊ぶのはメックアリーナ2013。ロボットを選んで殴り合うダイス格闘ゲームだ。 月刊スパ帝国2013年3月号の付録である。

 

/ウィィィィィィイイイイイイイイイイン\

奥ゆかしく礼をして試合開始。高校野球よろしく開始時にはサイレンを鳴らす。右がゲストの手妻師、左が筆者スパ帝である。なおこの試合は「拡張現実」というコンセプトのもとゲーム展開に合わせて全手動でiPadから効果音を出している。「ズギュン!ガシュッガシュッ」と口で言っていた20世紀に比べると著しい技術の進歩である。

 

手妻師の使用機体ネルヴァ。忍者めいた二刀流から致死的な斬撃を繰り出す。

 

スパ帝の使用機体ペルメル。重砲撃専用なので近づかれると脆い。

 

/ビシッ\

先行手妻師の攻撃。「リボルバー」で近づきながら相手を撃つ! ダイスを2個振ってどちらかが4・5・6なら命中だ。見事ヒットし装甲を削った!

 

距離 1/4
スパ帝 手妻師
HP 3/3 3/3
装甲 5/6 6/6
気力 0/2 0/4

この表がゲームに使う数値の全てである。射撃で敵の装甲を減らし、近づいて殴る! 装甲が薄ければ薄いほど格闘攻撃が当たりやすい。格闘攻撃が当たる度にHPが減り、0になると爆散である。手妻師の行動により「距離」が初期値の2から1になっている。

 

負けじとスパ帝も「チェーンガン」で撃ち返すがダイスの目が悪く外れてしまう。

「うう……」
「ハッハッハ、弾が出なかったようだな!」

 

/デェェェェェエエエエエン\

手妻師の攻撃!「デュアルブレード」による格闘攻撃だ! この技は3個のダイスを振って相手の装甲より大きい目が1つでも出れば命中! ただし今回は「リボルバー」の直後に使ったのでコンボ効果で4個のダイスを振る事ができる!

出た目は1・2・2・6!「6」が装甲値の「5」を上回ったので命中だ!

「くそー、HPを削られてしまった」
「HP3のうち1を取った、もう33%勝利したも同然である!」

格闘戦を仕掛けると自動で反撃が発生する。ダイス2個を振って出た目は3・5。手妻師の装甲が6あるためどうやっても命中しない!

 

距離 2/4
スパ帝 手妻師
HP 2/3 3/3
装甲 6/6 6/6
気力 0/2 1/4

格闘攻撃命中によりスパ帝のHPが3→2に減少。HPが減ると装甲は6に戻る。格闘戦後は距離は再び2になる。またデュアルブレードの効果により手妻師の気力が1増えた。

 

/スカッ\

何とか反撃の糸口を掴まなくては。スパ帝は格闘武器「H.E.A.T.ハンマー」を使用。距離2からでは届かないので空振りになるが、気力を上げつつ距離を詰める事ができる!

 

距離 1/4
スパ帝 手妻師
HP 2/3 3/3
装甲 6/6 6/6
気力 1/2 1/4

気力が溜まると強力な必殺技が使える。

 

すかさず手妻師は「リボルバー」で攻撃! 命中! 装甲が剥がれる!

 

距離 0/4
スパ帝 手妻師
HP 2/3 3/3
装甲 5/6 6/6
気力 1/2 1/4

このままではまたデュアルブレードによる斬撃を受けてしまう。ならばその前に相手の装甲も削っておき、格闘戦で相打ちに持ち込むのだ!

 

/ブオガガガガガガガガガ\

スパ帝は「チェーンガン」を使用! この武器はダイスを1個振って4・5・6なら命中。最初の出目は「6」で命中だ!

続けて2発目を発射。この武器は命中している限り無限に撃ち続ける事ができるのだ! 「4」で命中!

更に3発目!「5」で命中! 4発目!「4」で命中! 5発目にしてようやく「2」で外れとなり攻撃が止んだ。

 

距離 0/4
スパ帝 手妻師
HP 2/3 3/3
装甲 5/6 2/6
気力 1/2 1/4

4発命中により手妻師の装甲が6→2へ激減。形勢が変わって来た!

 

手妻師のターン。デュアルブレードで格闘攻撃を発動!

「防ぎ切ってみせる!」
「防げるかなぁ!」

/デェェェエエエン\

目は3・4・6・6! 命中!

「よっしゃあ!」
「グワーッ! 6が出てしまった!」

続けて格闘反撃! 4・5で命中!

 

距離 2/4
スパ帝 手妻師
HP 1/3 2/3
装甲 6/6 6/6
気力 1/2 2/4

格闘戦で相打ちになり、双方ともHPが減少! 距離2、装甲6からの仕切り直しだ!

 

ここでスパ帝は気力を1消費して「メタルファイア」を使用! ダイスを2個振ってどちらかが4・5・6なら命中、装甲を削り相手を1回休みにするという強力な武器だ!

出た目は2・6! 命中!

 

距離 2/4
スパ帝 手妻師
HP 1/3 2/3
装甲 6/6 5/6
気力 0/2 2/4

手妻師1回休み。続けてスパ帝の攻撃だ。更にチェーンガンを撃ち込む! 6! 命中! 2! 外れ!

 

距離 2/4
スパ帝 手妻師
HP 1/3 2/3
装甲 6/6 4/6
気力 0/2 2/4

連続攻撃で手妻師の装甲が一気に4まで減少。

 

「リボルバーで近づいてもH.E.A.T.ハンマーを使われてしまうのでデュアルブレードへの連携はできない。だが装甲を削っておかないとその先が無い…」

思案の末に手妻師が下した決断は「ローリングショット」! 気力を2消費し、近づかずにその場で2発撃つ。そしてどちらかでも命中すれば次のターン無敵になるという攻防一体の必殺武器だ!

ダイスロール! 1発目は「5」で命中! 2発目は「6」でこれも命中!

 

距離 2/4
スパ帝 手妻師
HP 1/3 2/3
装甲 4/6 4/6
気力 0/2 0/4

この一撃で双方とも装甲4になった。

 

できればその場を動かずに撃ちたい。しかしルールにより同じ武器を続けて使う事はできない。スパ帝は仕方無くH.E.A.T.ハンマーを空振りして近づく事にした。

 

距離 1/4
スパ帝 手妻師
HP 1/3 2/3
装甲 4/6 4/6
気力 1/2 0/4

空振りにより気力を上げつつ接近。

 

すかさず火を噴く手妻師のリボルバー! 命中!

 

距離 0/4
スパ帝 手妻師
HP 1/3 2/3
装甲 3/6 4/6
気力 1/2 0/4

この一撃で装甲が3まで減少。ほぼ死にかけである!

 

何とか切り返したいがH.E.A.T.ハンマーは前のターンに使っている。メタルファイアは距離1以上でなければ使えない。そこで乾坤一擲のチェーンガンを使用! ルールにより 装甲を削り切れば相手を1回休みにできる! 先ほどの連続ヒットを期待だ!

「4!」
「うわあよく当たるな!」

続けてダイスを振るも2発目は「2」で外れ。

 

距離 0/4
スパ帝 手妻師
HP 1/3 2/3
装甲 3/6 3/6
気力 1/2 0/4

1発命中で装甲4→3となった。

 

「さあそれでは終わりだぁ! リボルバーからのデュアルブレードコンボ!」
「来んな! こっち来んな!」

本来ならダイスを4個振る所であるが、相手のHPが残り1の時はダイスが1個減るので3個となる! 手を稲妻の如き早さで動かしての三連撃! 1つ目のダイスは「3」!

「1個ずつ振るのやめろよ!」
「二発目ー! うらーっ!」

そして出た目は「6」! 格闘攻撃命中!

 

「グワーッ!!」
「よっしゃー!!」

スパ帝爆発四散! 見事手妻師の勝利となった。

「だがまだ終わらん! お前の精神も一緒に連れて行く!」

 

/ウィィィィィィィイイイイイイイン\

礼をして試合終了。その2へ続く!

 

メックアリーナ2013(月刊スパ帝国2013年3月号)はストアで購入できます。

8/6 RRS秋葉原店公開配信

ボードゲーム忍者生配信の出張企画!


2013/8/6(火)、18:30からRRS秋葉原店プレイスペースにて。配信は1時間を予定。お店に来てくれれば終了後に遊べるぞ!

  • 2013/8/6(火)
  • 18:30〜19:30(配信時間)
  • Role&Roll Station 秋葉原店(ロール&ロール ステーション)
  • 東京都千代田区外神田3-14-9 北澤ビル6F
  • 入場無料
  • 事前予約不要(入場者過多の場合は整理)

店舗Webページ:http://www.arclight.co.jp/r_r_s/aki/

#32 ニカイア

人狼を逆にしたゲーム。自陣営の仲間を教皇に選出する。複雑過ぎたためお蔵入り。

 

使う物

  • 役割カード「カトリック」「カトリック長老」「アリウス派」
  • 投票記録用メモ用紙

 

始め方

  • 席順と最初の親番プレイヤーを決める。
  • それぞれ自分の名前をもじってラテン語風の名前を付ける。
    • 「ニウス」を付ければだいたいそれっぽい。
  • 役割カードをよく切って裏向きに1枚ずつ配る。
    • 3人なら「カトリック」「カトリック長老」「アリウス派」各1枚。
    • 4人なら「カトリック」2枚。
    • 5人なら「カトリック」3枚。
    • 役割カードを見てよいのは本人のみ。

 

遊び方

  • ゲームはプレイ人数と同じ数のラウンドで構成される。
  • ラウンドごとに親番は時計回りに移る。
  • ラウンドは次の様に行う:
  • 最大得票者は次のラウンドで2票を持つ。
    • 親番プレイヤーは自分の左隣のプレイヤーの役割カードを覗き見る。
    • 誰が教皇に相応しいか会議を行う(ルール上の拘束力無し)。
    • 互選方式で投票を行う。
      • 合図とともに一斉に投票先を指差す。
      • 棄権は不可能。
      • 自分自身への投票も不可能。
    • 全員の得票数を記録する。
    • 最大得票者は次のラウンドで2票を持つ。
      • 首位タイの場合はその全員が最大得票者と見なされる
    • 人数+1票以上を獲得したプレイヤーがいれば教皇に選出されゲーム終了。

 

勝利条件

  • 「カトリック」が教皇に選出されればカトリック陣営全員の勝ち。
  • 「アリウス派」が選出されればアリウス派の勝ち。
  • 「カトリック長老」が選出されるとアリウス派の勝ち(すぐに死んでしまうので異端を弾圧できないのだ!)。
  • 最終ラウンドを終えても教皇が選出されなければアリウス派の勝ち。ただし:
  • 最終ラウンドでカトリック長老が最大得票者であればカトリックの勝ち。

#31 ころころシアム

2〜4人用ダイスゲーム。目を揃えて他のプレイヤーを殴る。最後まで生き残れば勝ち。

 

使う物

  • 6面ダイス6個(うち1個色違い)
  • HPカウンター(1〜10まで表せるもの)4個
  • 攻撃値カウンター(0〜10まで表せるもの)1個

 

始め方

  • 席順と初手番プレイヤーを決める。
  • 全員にHPカウンターを配り、初期値10に設定する。
  • 攻撃値カウンターを初期値0に設定する。

 

遊び方

手番

  • 時計回りに手番を行う。
  • 手番が来たらダイスを3回振って攻撃値を決める。
    • まず6個のダイスを振る。
    • 出た目の内から1種類を選び全て取り置く(例えば「5」を選んだら5の目が出たダイスを全て取る)。
    • 残りのダイスを振り、また1種類を取り置く。
    • 3回振って取り置いたら攻撃終了。取り置いたダイスで攻撃値を計算する。
  • 前のプレイヤーの出した攻撃値と同じか下回っていれば、攻撃値分のダメージを受けHPが減少する。
  • 前のプレイヤーの攻撃値を上回れば(同点は不可)「切り返し」成功。ダメージを受けない。
  • 全てのダイスを取り置いた場合も「振り切り」成功。ダメージを受けない。
  • 出した数値に攻撃値カウンターを設定して手番終了。

 

攻撃値計算

  • 「1」が1〜6個あれば+1点。
  • 「2」が2〜6個あれば+2点。
  • 「3」が3〜6個あれば+3点。
  • 「4」が4〜6個あれば+4点。
  • 「5」が5〜6個あれば+6点
  • 「6」が6個あれば+9点
  • 「1」が7個あれば+5点。
  • 「2」が7個あれば+6点。
  • 「3」が7個あれば+7点。
  • 「4」が7個あれば+8点。
  • 「5」が7個あれば+9点。
  • 「6」が7個あれば+10点。
  • 「4」「5」「6」がそれぞれ1個以上あれば+3点。
  • 成立している役全てを合計した物が攻撃値になる(例えば444456なら「4が4個」と「456がそれぞれ1個以上」の両方が成立して4+3=7点)。
  • 色違いのダイスはパワーダイス。2個分として扱われる。

 

死亡

  • HPが0になったプレイヤーは退場。以後ゲームに参加しない。
  • 誰かが退場するごとに、残っているプレイヤーは全員残りHPの1/3(端捨)を失う。
    • 血液が凍り付く断末魔の雄叫びだ!
    • 計算は「残りHP3につき1のダメージ」で行う。10〜9なら3ダメージ、8〜6なら2ダメージ、5〜3なら1ダメージ、2〜1ならダメージ無し。
  • 最後まで残っていたプレイヤーの勝利!

翻訳記事:勝つ為に戦う(15)

これは翻訳記事です

 

分断と征服

 

Zileasという男

私は格闘ゲームの世界で育って来たが、どのゲームも大体同じ様なコミュニティを持っているはずである。RTS界にはZileas(本名トム・カドウェル)という男がいるのだが、彼は言わば平行世界の私である。ちなみに彼はMITにおける私の後輩であるが直接会った事は無い。我々はそれぞれのゲームで有名になり互いの存在を知った。そして今ではどちらもゲーム業界にいる。

Zileasは敵を分断して征服する事や、火力を集中する事について色々書き残している。まさに孫子と同じである。

ZileasはStarCraftについて論じ、孫子は実際の戦争を論じているが、RTSというのは実際の戦いを(一応)模した物である。ゆえに両方の達人が同じ様な考察に至ったのも驚くには当たらない。興味深いのは、孫子は大規模なマクロ管理の観点から、Zileasは小規模なミクロ管理の観点からそれを書いている事だ。皮肉な事に、ZileasはまさにそれによってStarCraft界で名声を獲得した。マクロ管理を重視する「守旧派」と一線を画し、ミクロ管理による分断と火力の集中を重視する「革新派」アプローチを確立したのである。何が皮肉か分かるだろうか? 守旧派も革新派もその実、孫子兵法に見られる同一の考え方をそれぞれに適用した物なのである。

孫子はマクロな観点において、双方の兵力を勘案していつ攻めるかを論じている:

戦いの鉄則。敵の10倍の兵力があればこれを囲む。5倍あれば攻める。2倍あれば部隊を2つに分けて挟み撃ちにする。そして前に対応すれば後ろから、後ろに対応すれば前から潰す。兵力が同等なら敵を誘い出すもよし。やや不利なら敵を避ける。大きく不利なら逃げる。寡兵でも頑強な戦いはできようが、最後には衆兵に捕われる。

Zileasはマクロな観点において、どんな場合に(StarCraftの)敗北が起きるか論じている:

キルレシオ(彼我損耗比)に双方の生産力比をかけ算して、答えが1を下回っていれば敗北に向かっている。相手の生産力が伸びつつあり、自分は停滞していて、かつ先の値が1に近ければやはり敗北に向かっている。キルレシオというのは双方の死んだユニットの数ではなくて、死んだ資源の量で考える。ユニットの生産コスト、維持コスト、施設の建設コストなどである。

このZileasの言葉はいささか不思議かも知れないが、20回かそこら読む内にはStarCraftの深い見識が得られよう!

 

兵力の不均衡

孫子の主たる論点の1つは、敵より多くの兵で攻めるという事である。仮に敵軍が自軍と同等の規模と戦力を持っていたとしても、部分部分に注目する事でそれは可能になる。敵が広大な帝国の1ヶ所だけを守っていて、かつこちらがそれを知っていたら、帝国の残りの部分は全く無防備である。自軍の一部分を割くだけでも無防備な拠点を次々に落とせるだろう。逆に多くの拠点を相手が同時に守っていたら、個々の部隊はそれだけ小さくなる。相手が10ヶ所ある拠点を全て均等に守っており、こちらが全軍の半分を1ヶ所に集中させて攻めたら、それだけで戦力比は5対1になる! こちらは火力を一点に集中させ、相手は分散し弱まっているのである。

こうした戦術の成否はいかに自軍を隠し、敵軍を偵察できるかにかかっている。隠蔽と偵察無しには孫子の「分断と征服」方式は実現しない。

こちらがどの拠点を攻めるかは事前に知られていてはならない。どこを攻めるか分からなければ、相手はいくつもの拠点で同時に守りを固めなくてはならない。即ち戦力が分散され、どこを攻めようとこちらの戦力が上回るという事になる。

戦力が減るのは複数の攻撃可能性に備えるからである。戦力の優位は相手に分散守備を強制する事によって生まれる。敵がいつどこから来るか分かっていれば、広く散らばった部隊を集結させてそれに備える事ができる。しかしいつ来るかもどこから来るかも分からなければ、左翼は右翼の救援に行けず、右翼もまた左翼を助けられない。前方は後方を助けられず、後方も前方を助けられない。

そこで孫子は自軍の位置と意図を秘密にせよと説く。そして敵軍の位置と意図を探り当てろと説く。そうする事によって、こちらは敵の弱点に火力を集中できる。その為に防備をおろそかにしたとしても、敵がこちらの弱点を知らなければ攻めようが無い。敵の分散した部隊はこちらの集中した部隊に対してなす術なく打ち破られるのである。

 

StarCraft「守旧派」アプローチ

孫子のアプローチはZileasが言う所の「守旧派」である。守旧派のStarCraftプレイヤーは強力な経済の建設を目指し、それによって敵を上回る量のユニットを作ろうとする。敵に10倍すれば囲み、5倍すれば攻めよ。まさにこの考えである。個々の局地戦は重要でないと彼らは考える。重要なのは大きな機動戦力を作り上げ、敵の弱点を突ける様にする事だ。

彼らの殆どはStarCraftの前作、Warcraft 2から来ている。Warcraftのインターフェースでは個々のユニットを操作して戦いを管理してもそれほど益は無かった。Warcraftのユニットは全体に均質で、StarCraftのTemplarとReaverに見られる様な50:1の損耗比は存在しなかった。勝つ為には全体の管理こそが重要だった。大きな軍隊を作り、敵を分断し、自分の戦力を集中する。

 

Starcraft「革新派」アプローチ

そこにZileasがやって来た。彼はミクロな戦闘管理と個々の局地戦がどれほどStarCraftにおいて重要かを指摘した。そして分断と征服を非常に小さなスケールで行うという新しい考えを広めた。

教練その1。Shiftキーでキューを入れて火力を集中すべし。仮に敵と遭遇し、双方ともMarineが10体ずつだったとしよう。普通ならユニットは専らランダムに撃ち合い、戦闘の終盤になってようやくユニットが死に始める。ところが上級者は全てのユニットを選択し、敵の1体に向けて集中砲火を浴びせる。そしてShiftキーで次の命令を出しておき、その次のユニットにまた集中砲火できる様にする。この繰り返しだ。10体の集中砲火によって敵の1体はすぐに死に、その分だけ敵部隊の火力は減る。Shiftキーで命令を出しておいたのですぐに次の1体に集中砲火し、それも倒したら次の1体、その次の1体と続く。相手は火力を分散しているのに対しこちらは集中している。このテクニックをこちらだけが使っていれば、戦闘が終わる頃にこちらは4体生き残り、敵は全滅しているだろう。

教練その2。陣形を使って火力を集中せよ。2つの部隊が交戦し、戦力はどちらもMarine10体ずつだとしよう。この場合陣形が全てを決める事がある。一方のプレイヤーは長蛇の列で行進し、もう一方は横一列の陣形でそれを迎え撃ったら、横陣は縦陣の先頭ユニットに集中砲火を浴びせられる。それを倒したら2番目。また倒したら3番目。行列の最後のユニットが戦場に着く頃には、他のユニットは皆死んでいる。横陣より更に良いのは「浅い弧」である。弓なりの陣形で最大の火力集中を可能にするのである。

教練その3。狭い場所を塞いで敵を分断すべし。大軍が狭い道(自然地形なり人工物で塞がれているなり)を通らねばならない場合、必然的にそれは分断される。通って来るユニットを待ち構えて1つずつ撃破すればよい。

教練はまだ沢山あるが、要点は個々の戦いにおいて火力を集中するという事である。Zileasの最も象徴的な火力集中戦術は”Doom Drop”だ。

Zileasはプロトス使いである。プロトスはユニットの数は少ないが個々の攻撃力が高い。つまり何もしない内から既に火力が集中されているのである。いわゆるDoom Dropとは、輸送機(他のユニットを運ぶ飛行機)4隻程度を用意し、Reaver、Templar、Archonなどの強力なユニットをそれに詰め込む。場合によっては戦闘機の護衛を付ける。この超戦力、即ち集中した火力を素早く一点に投入すればほぼどんな拠点も落ちる。Archon1体、Reaver3体、Zealot4体、Templar3体が突如として本拠地の真ん中に出現したら、それだけでもう対処のしようが無い。応戦しようにも味方の位置取りが悪過ぎる。

これの強化版もある。投入したユニットの幻影を作り出して敵の攻撃を吸収するのである。輸送機を4つも敵陣に突入させるのはそう簡単ではない。道中に敵の対空砲があったら撃ち落とされてしまうからである。そこで例えば輸送機4体に戦闘機5体を同行させると、ターゲットが増えて敵の砲撃が分散される。そこで更に10体の戦闘機の幻影を同行させればもっと良い。幻影は攻撃力を持たないが、敵の攻撃を引きつけて本物を守ってくれる。幻影は敵を欺き、その対空攻撃力を分断するのである。

 

ミクロとマクロ

ではなぜ「分断と征服」を大きなレベルでもやらないのだろうか? 戦闘レベルの集中と戦略レベルの集中はどちらか片方を選ばなくてはならないのだろうか? StarCraftにおいてその答えはイエスである。本当に。人間の注意力は有限であって、Doom Dropを仕掛けるのも大規模な経済を建設するのも相応にそれを消費するからだ。

 

第三の資源:集中力

Zileasは語る:

資源というと、殆どのプレイヤーは鉱物とガスを思い浮かべる。勿論それはゲームの中核であるが、同時に集中力という要素も考えなくてはならない。ここでは集中力をプレイヤーが何らかの作業に集中できる時間として定義する。新拠点の建設は多くの集中力を要する作業である。とりわけプロトスにとってはそうだ。軍事攻撃も動揺に多くの集中力を要し、また多くの集中力を投ずればそれだけ効果が増す。偵察すら集中力を要する。優れたプレイヤーと頂点に立つプレイヤーの大きな違いは、いつ戦いにかかり切りになる必要があるかを知っている事だ。そして相手もまた有限の集中力をやりくりしているという認識だ。集中力の消費を最小限に抑えるテクニックは色々ある。ホットキーを使うとかキューに命令を入れるとか。しかしそれでも、全ての行動は何らかの形で集中力を消費する。そしてStarCraftが上手くなれば、それだけ多くの集中力を持った相手と対戦する事になるはずだ。集中力という資源が充分にあれば、それを活かして複数箇所に同時に攻撃を仕掛け、敵を圧倒するという手も使える。そして残念ながら、集中力はほぼ生まれつきの才能によって決まる。多くのゲームをこなせばゆっくりと成長するが、それでも持つ者と持たざる者は厳然と存在する。これは言わば短距離走の能力に近い。長距離走者には訓練すればなれるが、短距離走者には才能の壁が立ちはだかる。ゆっくりと成長させる事はできても個々人の限界がある。もし私と同等の技能と、より優れた才能を持つプレイヤーがいれば、頂点の座は間違いなく奪われてしまうだろう。

集中力を鍛える最も良い方法は2対1や3対1で戦う事だ。つまり複数の対戦相手と同時に戦う。私は3対1でも大抵勝てる。2対1ならほぼ負けは無い。そしてそれが可能な理由は、単純にマルチタスクが得意だからである。また2対2のチーム戦というのも興味深い。双方の陣営とも通常の2倍の集中力を使えるのである。正確には「ほぼ」2倍である。チームメイトと意思疎通をしなくてはならないからだ。

プレイヤーが大小どちらの管理に集中力を投ずべきかは、個々のゲームとプレイスタイルによって変わる。そしてどちらの場合でも原則は同じだ。火力を集中し、敵を分断せよ。

 

原文:http://www.sirlin.net/ptw

ギミック倉庫6

年表戦列

戦列を奪い合うゲームだが、各列はそれぞれの年代を表している。進行は過去から未来へ行い、他の列への影響も未来に対して一方通行である。

 

合理的な人狼

占い師の役職は存在しない。全員が左隣のプレイヤーの役職カードを見てよい。または/加えて 役職カードをドラフト方式で引く。人数+α枚のカードをランダムに用意し、順番に1枚取って残りを伏せたまま隣へ回す。

 

逆人狼

互選をして自分の陣営のメンバーを当選させれば勝ち。繰り返し投票して徐々に下位候補を落とすなど。当選すると敵陣営の勝利になるプレイヤーなども。

 

宝石袋

袋から宝石を引く。何個でも続けて引いてよいが、同じ色の宝石を引く・ハズレを引くなどの条件でその回に引いた分がパーになる。引いた物はスコアリングボードに並べて最終得点を競う。カードでも可。

 

グレーターフールレース

数字カードを使い、すごろくの要領で盤上の洞窟を奥に向かって進む。洞窟の奥からは幽霊が出て来る。幽霊に取り殺されたら負け。生き残っている者の内で最も多くの財宝を集めれば勝ち。数字カードを公開ドラフトにして最後尾のプレイヤーから取り始め、残ったカード分だけ幽霊が進むなど。

 

ドラフト都市開発

施設カードをドラフトで取る。自分の陣地に配置して得点を増やす。施設同士の隣接や前提条件など相互作用を駆使する。

 

ロンバルディアの王冠多人数戦

騎士は最も手札の多いプレイヤーを狙う。騎士は相手の手札を見る前に奪う札を指定する。「密偵」は最も手札の多いプレイヤーを狙い、手札を公開させ、自分の手札と1枚交換する。「学者」はそのターンの得点を2倍にする。「商人」は他のカードを捨てて得点にする。

 

グリッドワーカープレイスメント

ワーカーを「列」か「段」に順番に置く。その後逆順で列や段の内の好きなマスに移す。列・段自体にも効果や相互作用。「誰かがこの列に置いたら」式の常在ボーナスも。

 

金の卵を産む鶏オークション

鶏を競りにかける。支払いは自分の持っている鶏を絞めるか、鶏の産んだ卵を出す。競りが終わる度に鶏は卵を産む。歳を取ると勝手に死ぬ。

 

肉牛育成

買った家畜に少しずつ飼料を与えて成長カウンターを乗せる。規定数まで溜まったら高く換金できる。資源が「いつ」必要かに焦点を当てた単資源管理ゲーム。

 

疲労レベル

ターンが来るごとにユニット1つを動かす。動かしたユニットは疲労レベルが1上がる。全員がパスするとラウンド終了。ラウンド終了時に全てのユニットから疲労を3ポイントずつ取り去る。疲労レベル1から0へは2ポイントだが、レベル4から3は4ポイントなど集中的に使うと長時間動けなくなる。

 

植民地交易

本国の産業を開発しつつ植民地を獲得。植民地は「市場」として製品の売り込み先になる。稼いだ金で原料を購入できる植民地もある。受け入れる製品の種類は植民地ごとに設定。投資すれば更に大きな市場に変わる。