Hearthstoneの戦い方(2)

CCG “Hearthstone” に関して始めて4週間ほどで気付いた事を記録。


Hearthstoneの戦い方(1)

Hearthstoneの根幹は優位を積み重ねる事だが、これにはどうやら2つの側面がある。対称な優位非対称な優位である。前者は彼我のデッキに関係なく有利になり、後者はデッキが異なっている事によってのみ有利になる。構築に大きく影響する概念として以下に論じよう。

 

対称な優位

まず、自分と対戦相手のデッキがほぼ同一であると仮定しよう。似たようなマナカーブを持ち、同じ大きさのミニオンを大体同数入れている。この場合、リソースアドバンテージ(自分の2マナミニオンで相手の4マナミニオンを打ち取った)とテンポアドバンテージ(自分のミニオンだけが盤上にいる状態を1ターン維持して相手を殴った)はどちらも確実に戦況を有利にする。山札の中身に大きな差が無い以上、戦場の資源で勝る側が勝利により近いのである。これが全ての基礎である。

カードパワーを論ずる際は往々にして対称な優位をどれだけ得やすいかが焦点になる。例えば我らが大グモくんは同じ2マナの3/2ミニオンと相打ちになった後、なお1/1を1体余すことができる。ヘックスの呪文は3マナをはるかに上回るミニオンを無力化できる。こうしたカードは彼我の陣営が対称であれ非対称であれ優位を得やすいために使いやすく強力とされるわけだ。

 

非対称な優位

これに対して非対称な優位はもう少し込み入っている。例えばパラディンが2ターン目にヒーロー能力で1/1を召喚し、相手のメイジがヒーロー能力でそれを除去したとしよう。双方の能力を打ち消しあっただけで盤上は何も変わらない。それぞれカードを引いて1ターンが経過したのであり、時は両者に平等に流れている。

あるいは双方のヒーローが盤上に同じミニオン1体ずつ展開していて、それぞれ相手のミニオンを無視してヒーローを直接殴ったとしよう。これまた両者平等に血を流した形であり対称な優位はどちらにも発生していない。デッキ内容が同等であれば戦況はどちらにも傾いていない筈である。

しかし現実にはしばしば対戦相手のデッキ構成は非常に異なる。そしてそれゆえに平等な展開であっても一方が有利になる。戦線が膠着したまま1ターン経過して双方1枚のカードを引いたとしよう。このとき一方のデッキにだけマウンテンジャイアント(手札が多いとコストが下がる)が入っていたら、この膠着によって少しだけ有利になる。あるいは一方のデッキだけファイアボールやフロストボルトを満載していたら、双方のHPが15程度まで下がると俄然王手がかかる。双方が同じ利益や不利益を被った様に見えても、実はデッキ構成の違いから一方が有利になる場合がある。

 

デスラトル:対称優位の塊

アンダーテイカーおよびデスラトル持ちのミニオンを満載したデッキはメタの一角である。これらはコストあたりの戦闘力が高かったり除去耐性が強く、同マナの殴り合いで非常に有利である。2マナの大グモを2マナのフロストボルトで除去しても尚1/1の子グモが2体残る。3マナの邪教徒が3マナのブレードマスターと相打ちになっても尚+3点のHPを味方に遺せる。同格の取っ組み合いで明らかに強いのだ。

ところがこうした強さは非対称な戦場では十全に発揮されない。大グモが除去されずに残っても、相手のHPを1点ずつ削る以外に大した事はできぬ。ナイフジャグラーなど攻撃的なミニオンを満載したデッキに比べ、どうしても相手に大きなミニオンを出すまでの時間を与えてしまう弱点がある。

デスラトル系は言わば同等のマナカーブを持ったデッキを殺す刺客である。それは「戦車を破壊する戦車」とか「投げを吸い込む投げ」とか「ニンジャを殺すニンジャ」みたいなもので、ジャンケンの中のサブカテゴリである。自身が属するカテゴリに対しては格段に強く、代わりに他のカテゴリにやや弱い。既にラダーではデスラトルデッキに対抗する低速デッキが流行しつつある。強力だが無敵ではないのである。

ただしアリーナではやや様相が異なる。こちらは強力な大型ミニオンがそもそも出て来にくいため、必然的に小〜中ミニオンの殴り合いになる。デスラトルおよび対称優位を得やすいカードは大活躍だ。

 

まとめ

どんなゲームであれ、上達の秘訣は失敗から学ぶことだ。そして失敗の原因をできるだけ細かく特定するのが何より重要である。「なんとなく決め手を欠いて負けた」より「3ターン目にアンダーテイカーを処理できないのにむざむざミニオンを差し出してしまった」の方が経験になる。勝ったにせよ負けたにせよ、それが対称な優位(ミニオンのやりとりで得をした)の産物か、それとも非対称な優位(重いカードを活かせる後半までもつれ込んだ)の結果であるかは区別する必要がある。

 

( ・3・)<いまランク6なんだ それなりー>(・q・ )

Hearthstoneの戦い方(1)

CCG “Hearthstone” に関して始めて2週間ほどで気付いた事を記録。


Hearthstoneはデッキを持ち寄って2人で戦うオンラインカードゲームである。デッキの組み方もさることながらプレイングが非常に重要である。この部分に関していくつかの覚え書きをしておく。

 

優位を積み重ねる

2人対戦ゲームの多くと同様、このゲームも小さな優位の積み重ねで勝利に至る。小さな駒で大きな駒を討ち取ったとか、相手の駒を只で取ったという様な「得」が積もり積もって勝敗を決する。ミクロな段階における工夫が最終的に大きな違いになる。

優位には2種類ある。仮にこれをリソースアドバンテージとテンポアドバンテージと呼ぼう。前者はいわゆる「駒得」であり、自分より相手に沢山のものを失わせて獲得する。例えば2マナの武器カード1枚を使って敵のミニオン(駒)2体を倒すとリソースアドバンテージが得られる。後者は自分のミニオンだけが盤上に存在している「時間」である。その間に相手のヒーローを一方的に殴ってHPを減らせる。

最終的な勝利はテンポアドバンテージを取る事で得られるが、そこに至る道筋は複数ある。それがHearthstoneを興味深い物にしている中核である。

 

アグロ:先に駒得、後で殴る

典型的なデッキの一類型がアグロである。軽量のミニオンを多く入れておき、早い段階でフィールドに展開する。それだけでなく武器や特殊能力付きミニオンを利用して積極的に駒得を狙うのが特徴である。敵が2体のミニオンを展開したら、自分は武器カード1枚を使ってその両方を討ち取り、更に1体のミニオンを展開する。こうすると盤上は自分のミニオンだけになるので敵のヒーローを勇んで殴り倒す。

「先にリソースアドバンテージを取り、それを利用してテンポアドバンテージを得る」これが基本原理だ。ローグはこの戦術の名人で敵ミニオンを片付けつつ自分のミニオンを展開できる。

 

コントロール:先に時間稼ぎ、後に駒得

アグロと対照的な類型がコントロールデッキである。コストの重い強力なカードは1枚で弱いカード複数枚と相殺できる物が多い。そうした巨砲を多数入れておき、使えるだけのマナが貯まる後半まで時間を稼ぐのである。

重い呪文やミニオンは軽い物に比べてコスト効率に優れる。Aのデッキには軽いミニオン、Bのデッキには重いミニオンが多く含まれているとすると、時間が経てば経つほどBは有利になる。挑発持ちを挟んで1ターン睨み合うだけで既に「得」をするのだ。

メイジはコントロール戦術の代表的な使い手である。フロストノヴァは敵全体を凍らせて1ターン動けなくする。カード1枚を使うのに敵ミニオンを破壊するわけではないから「駒損」であるが、代わりに敵のテンポアドバンテージを失わせている。一方的に殴られる時間が減るという事は殴り倒されるまでの時間が延びるという事であり、フレイムストライクなど盤面をまとめて片付けるカードを使うまでの時間が稼げるわけだ。凍結、アイスバリア、幻影の盾など「駒損になるが時間を稼げる」ギミックがメイジにはとても豊富に揃っている。

「まず相手のテンポアドバンテージを失わせ、後でまとめて駒を取る」これがコントロールの考え方である。

 

優位をどう計量するか

よい指し手とは優位を得る手である。では2種類のアドバンテージをどう計り判断すべきか。まずリソースアドバンテージは

  • カード1枚につき2点
  • マナコスト1につき1点

で考えるとほぼ近似値になる。これはチェスで駒の価値をナイトは3点ルークは5点と考えるのに似ている。0マナのミニオンカード「ウィスプ」と、パラディンがカード無しで2マナで生成できる兵士はどちらも2点の価値がある。ちょうど能力も同等である。これをメイジの2マナヒーロー能力で焼き殺すと2点と2点で等価交換になる。

1対1交換でも相手の方が点数が高ければ駒得である。例えば兵士が1マナのマーロックと相打ちになれば2点と3点の交換で1点の得だ。ポーン1個とナイト1個を交換したら駒得になるのと同じである。

特殊能力持ちのミニオンは本体と能力の価値を分割して考える。例えば1マナの軍曹を出して兵士を強化し、敵の熊(3マナ)と相打ちなったとしよう。後に残るのは能力を使い終わって2/1バニラと化した軍曹である。これは大体0.5マナ程度の強さだと考えると2.5点に相当する。残りの0.5点が能力のコストである。2点の兵士と0.5点の能力を合わせて5点の熊を討ち取ったから2.5点の駒得となる。ちょうどその駒得分の2/1ミニオンが盤上に残るという形でリソースアドバンテージを手にするわけだ。

点数計算に関しての補足

ミニオンや武器などの点数は「取得原価」で計算する。双方が同じだけのマナとドローを得ている以上、リソースのやり取りでどちらが優勢になっているかを判断するのにこれが便利だからである。1マナのミニオンは常にカード1枚+1マナで3点である。能力を放出した後の絞りカスに2.5点程度の価値があるとすれば、能力の取得原価は強さに関係なく0.5点である。そもそも能力付きミニオンは「駒」と「呪文」の抱き合わせ販売で安くなっており、両方を活かせる局面で使えばほぼ自動的にリソースアドバンテージを得られる仕組みである。これは能力を活かせない局面だとバニラより損をするというリスクと引き換えになっている。

 

テンポアドバンテージの計量

もう一方のテンポアドバンテージはヒーローのHPで計る。自分のミニオンを一方的に展開して敵ヒーローを5点分殴ったら5点のアドバンテージと数える。ただしこの「点」はリソースアドバンテージの点とは換算不能である。5点火力の呪文で相手の3マナクリーチャーを片付けるのと相手ヒーローを直接狙うのとどちらが良いかは盤面や残りのHPによって常に変わる。ゆえにこの2つの優位は本質的に別の資源である。

自分のHPを減らす行動(武器で殴る・インプを召還する等)は相手にテンポアドバンテージを与えるのと同じである。攻撃力3のミニオンを1ターン放置するのと自分のHPを3点犠牲にするのは同じ結果をもたらすからだ。逆にHPを回復したり装甲を上げるのは敵のテンポアドバンテージを相殺する形になる。

 

アドバンテージ間のトレードオフ

武器は往々にして、敵にテンポアドバンテージを与えるのと引き換えに多大なリソースアドバンテージを自分にもたらす。挑発持ちミニオンは価値の高いミニオンを守る(敵に駒得をさせない)ほか、敵のテンポアドバンテージを失わせる側面もある。

リーパーノームは1マナ2/1と2.5点相当の力しか無いが敵ヒーローにダメージを与えて2点分のテンポアドバンテージを作り出す。ゾンビチャウは1マナ2/3と4点近い力を持つがテンポアドバンテージを5点失わせる。テンポとリソースのどちらを重視するか、どの割合で交換するかはこのゲームで最も柔軟な判断を要する部分であり一概に正答を示す事は難しいが、「盤面の掃除に拘り過ぎてHPを削られて頓死した」といった状況が生じ得る事は念頭に置くべきである。

 

まとめ

このゲームは2種類の優位を積み重ねたり相互に交換して最終的に勝つ。どちらかの資源で一方的に損をしていたり、割に合わない比率で両者を交換していたら何かが間違っている可能性が高い。プレイングの継続的改善とデッキ構築の補助線としてこれらの基本原理を記しておく。後で上達したらまた見直す。

 

( ・3・)<始めたばっかりの頃にしか書けない事ってあるよね 後で見直すと気恥ずかしいよね>(・q・ )