Hearthstoneの戦い方(6)

CCG “Hearthstone” に関して気づいた事をその都度記録。


陸空の区分

このゲームの中心要素はミニオンである。盤上に自分のミニオンを並べて敵を殴り倒すのが全ての基本である。そしてまた、ミニオンは呪文や武器と決定的に違う点がひとつある。対戦相手からアクセスしやすいことだ。

このゲームは相手のターン中にできる行動が一切無く、特定のシークレットを伏せておかない限り発動した呪文を止める方法は無い。相手の手札を捨てさせる事もできない。武器を破壊する手段も限られているし、そもそも一撃目はどうあっても止まらない。ミニオン以外の攻撃手段は相手とのインタラクションが少なく、非常に邪魔されにくいのである。

これに対して速攻を持たないミニオンは場に出てから1ターン経過しないと仕事を始めない。つまり相手に最低1ターンそれを除去/無力化するチャンスが与えられる。ファイアボールを相手の顔面に向かって発射したらもう誰にも止められないが、マウンテンジャイアントが場に出たら次の相手のターンで除去される可能性がある。実際に顔面を殴れるのはその後だ。

そこでゲーム内の攻撃手段をミニオンという「干渉されやすい要素」と武器や呪文などの「干渉されにくい要素」に分割してみよう。そして干渉されやすい部分を「地上」、干渉されにくい部分を「空中」と考える。すると次の様な構図が浮かぶ。

  • 地上:ミニオン同士が殴りあう戦場
  • 空中:ヒーローという空中要塞が浮かぶ彼方

そして地上と地上、空中と空中、地上と空中それぞれの戦いを分類すると:

  • 地上戦:ミニオン同士の戦い
  • 空中戦:ヒーローによる直接打撃
  • 爆撃:ヒーローの呪文や武器によるミニオンの除去
  • 対空砲火:ミニオンによる顔面殴り

という形になる。これによってクラスやデッキの強み・弱み・相性などを説明可能である。

 

ウォリアー

  • 地上戦:全然ダメ
  • 空中戦:スゴイ
  • 爆撃:超スゴイ
  • 対空砲火:全然ダメ

典型的なウォリアーは重戦闘爆撃機である。1:2交換が簡単にできる斧、1マナ除去の処刑、5マナ全体除去の乱闘などミニオンの始末には事欠かない。またグロマシュのコンボによって14点ぐらいまでは簡単に相手の顔面にダメージを叩き込める。相手が干渉できない、ヒーローから直接出てくる攻撃手段が非常に豊富だ。

一方ミニオン同士の殴り合いは貧弱である。固有ミニオンの戦闘力が低く、使われるのは補助系やコンボパーツが中心である。フローシングバーサーカーや実質固有カードの増えるおじさんはあくまで「1ターンで敵ヒーローを殴り倒す」ためのミサイルであり、素出しして敵ミニオンと殴りあう事は稀だ。

こうした地上への対応力の高さと自身があまり地上戦を展開しない性質のため、ミニオン同士の戦いに重点を置いた戦車タイプに対してとても有利である。プリーストがクレリックを出せば斧で始末し、デスロードは処刑し、洗脳されるミニオンはそもそも出さない。一方フェイスハンターやテンポメイジの激しい対空砲火には押し負ける事が多く、顔面を徹底的に殴られると意外に早く陥落する。

 

プリースト

  • 地上戦:超スゴイ
  • 空中戦:ダメ(一部例外あり)
  • 爆撃:スゴイ
  • 対空砲火:ダメ

プリーストは地上戦の得意な戦車である。ヒールで自分のミニオンだけを生き残らせたり、1マナキャントリップで耐久力を増やしたり、敵を弱らせたり洗脳したりととにかく地上戦の選択肢が多い。一方こうした能力でアドバンテージを稼ぐには敵がミニオン同士の地上戦に付き合ってくれなくてはならず、全体的に攻撃力が低い事もあって相手の顔面を殴るのもそれほど得意ではない。

地上戦の強さからフェイスハンターなど対空砲タイプには有利に戦える。一方爆撃機に対しては出せる手が乏しく、ランプドルイドなど大型ミニオンによる地上戦タイプにもやや厳しい。

 

ハンター

  • 地上戦:まあまあ
  • 空中戦:スゴイ
  • 爆撃:まあまあ
  • 対空砲火:スゴイ

ハンターの最大の強みはヒーローパワーである。阻止手段のない2点ダメージはHPを回復できないデッキにとっては迫り来る死そのものだ。瞬間的なバーストダメージは乏しいが継続的な顔面殴りでは他の追随を許さない。

この強みを素直に活かしたのがフェイスハンターで、駒損は厭わずとにかく顔面に打撃を加える。他のヒーローであればあと1点が削り切れずに逆転負けする局面でもハンターならば確実に討ち取る。展開の遅いデッキは何もさせずに殴り倒してしまう。一方速攻持ちなどミニオン同士の殴り合いには弱い物が多く、戦車に対しては不利になる。

一方、堅実なミニオンを並べて盤面を取るミッドレンジハンターも存在し、こちらは地上戦がかなり強い。その代わり性質が戦車に近くなった事で爆撃機タイプには盤面を処理されてしまう場合が多い。

 

メイジ

  • 地上戦:ダメ
  • 空中戦:スゴイ
  • 爆撃:スゴイ
  • 対空砲火:まあまあ

メイジの強みは豊富な呪文である。フロストボルトやファイアボールは明らかに強く、ミニオンの除去に使っても相手の顔面にぶつけても有効である。ミニオンも呪文と相互作用する物が多くいかにも魔法使いだ。一方殴り合いの性能はそれほど高くなく、普通に展開しただけでは押し負けてしまう。

この問題を2つの工夫によって解決したのがメックメイジやテンポメイジだ。即ち「除去と展開を同時に行う」「相手の除去を邪魔する」である。

ブラストメイジは自身も相応の大きさを持ったミニオンでありつつ、登場と同時に4点火力を撒き散らす。フレイムウェイカーとポータルの組み合わせも召喚と砲撃を同時に行う。アプレンティスが居れば1マナで3点火力を浴びせつつ、余ったマナでミニオンを展開できる。こうして敵ミニオンを除去してしまえば殴り合いは回避できるわけだ。

またアノイオトロンやミラーイメージによって盾を作り敵ミニオンを押しとどめておくのも重要な戦術である。本命ミニオン同士の潰し合いを遅らせつつ相手の顔面を殴り、ファイアボールによる即死圏まで持っていく。武器を持ったヒーローが相手ならスノウチャガーやフロストボルトで凍らせる。こうした継続的な対空砲火によって遅いデッキや地上戦の苦手なデッキを叩きのめすのである。

これに対し、フリーズメイジは強力な除去で前半を凌ぎ、後半になったら強力な火力呪文で相手の顔面を粉砕するという素直に強みを活かした構成である。分類は戦闘機に近い。

 

ウォーロック

  • 地上戦:スゴイ
  • 空中戦:ダメ(一部例外あり)
  • 爆撃:まあまあ
  • 対空砲火:スゴイ

ウォーロックの強みはヒーローパワーだ。カードを1枚引けるのはほとんどの局面でアドバンテージを生み出す。敵ミニオンと1対1で交換しても自分はカードを補充できるし、マウンテンジャイアントなど手札枚数参照系の大物を素早く繰り出す事もできる。以前は大物中心のハンドロックと小物中心のズーロックが分かれていたが、最近は両方のいいとこ取りをしたハイブリッドが多くなった。

資源基盤が潤沢なお陰でまともに戦えば相当に強いが、HPを消費してしまう関係で顔面を集中的に殴るタイプには極端に弱い。また攻めも守りもミニオンに頼る割合が大きく、除去を山積みしたデッキには封殺される。

 

ドルイド

  • 地上戦:スゴイ
  • 空中戦:スゴイ
  • 爆撃:ダメ
  • 対空砲火:ダメ

典型的なドルイドは2つの強みを持っている。マナ加速によって大型ミニオンが敵よりはるかに早く出て来ること。そして自然の力と野生の唸りによる14点コンボである。ヒーローから直接出て来るダメージ源は相手の顔面に向かい、ミニオンを止めたり殴り合ったりするのは自分のミニオンという風に比較的役割分担がはっきりしているのが特徴だ。除去呪文も一応あるものの、大型ミニオンや多数が並んだ場合など対応できない局面がかなり多い(少なくともTGTリリース前の現時点では)。

戦車と戦闘機の両方の性質を持っている事から爆撃機タイプにはかなりのプレッシャーを与えられる。自然の力コンボのせいで即死圏がかなり広く、除去の過程でHPをあまり消耗できない。またミニオンを盤面に残しておく事自体にかなりのリスクがある。一方動き出しの遅さから速攻デッキに殴り倒される事もしばしばある。

 

シャーマン

  • 地上戦:ダメ
  • 空中戦:スゴイ
  • 爆撃:まあまあ
  • 対空砲火:超スゴイ

シャーマンはドルイドとはある意味で逆の構成になっている。ミニオンはミニオン同士の戦いには弱いが顔面を殴る能力が非常に高い。2回攻撃とフレイムタントーテムを組み合わせると恐ろしい速さで敵のHPが溶けてゆく。一方敵のミニオンを始末するのはヒーローの仕事であり、3マナ除去のヘックスや各種の武器を用いて確実に仕留める。空対地と地対空という役割分担になっているわけだ。

と、理屈の上では強力なのだが現環境では除去がうまく機能していない。アースショックはルートホーダーの天敵だが最近はあまり使われない。パワーメイスは3マナという重さのためその後に出るミニオンを討ち取りにくい。サンダーストームは取りこぼしが発生しやすい。またメイジと違い敵の除去を妨害する手段が豊富なわけでもなく、爆撃機タイプに対してしばしば攻め切れずに終わる。

こんなわけで構築戦で困難な状況にあるシャーマンだが、2回攻撃やブラッドラストの爆発力はとても大きな魅力だ。敵は序盤の対処に失敗すればそのまま棺桶へ超特急でぶち込まれる。メタが長期戦中心になり、軽い除去をあまり持たないデッキが増えれば急速に暴れ出すだろう。

 

パラディン

  • 地上戦:スゴイ
  • 空中戦:まあまあ
  • 爆撃:まあまあ
  • 対空砲火:まあまあ

武器・除去・ミニオンがバランス良く揃っており、ディバインシールドのお陰で地上戦もかなり得意だ。顔面に撃ち込む強力な呪文は乏しいが武器で少しずつ削り取れば蓄積ダメージはかなりのものになる。

典型的なアグロパラディンは対空砲に除去耐性を加えた形で構成されている。ディバインシールド・デスラトル・サイズ増加・単純な頭数の多さなどを組み合わせてミニオンでも武器でも討ち取られにくい盤面を作り、できるだけ長い時間にわたって顔面を殴り続けるというものだ。たとえミニオンを一掃されてもディバインフェイバーで手札を回復でき、持久力の点でも優れている。

ただし単純な速度という点ではテンポメイジやフェイスハンターよりやや落ちる。またパラディン自身に瞬間的な大ダメージ源が無い事もあり、敵に与える脅威はマイルドになっている。

 

ローグ

  • 地上戦:全然ダメ
  • 空中戦:超スゴイ
  • 爆撃:スゴイ
  • 対空砲火:ダメ

現環境での典型的なローグはオイルローグである。敵の脅威を除去で凌ぎつつスプリントでカードを引き、材料が揃ったら一気に即死級のコンボを繰り出す。相手にとってHP20は全く安心できる水準ではない。

こうしたコンボデッキに共通の弱点は、序盤からプレッシャーを与えられると対処に忙殺され必殺技の準備ができない事だ。デッキ内のかなりの割合を最終ターンに使うカードが占めているという事は、相手よりも有効牌を引く確率が低いという事である。もちろんコンボパーツを眼前の脅威への対処に使う事もできるがそうすると今度は勝つ手段が減ってしまう。飛車を防ごうとしても上手く行かないが、王手飛車取りをかけ続けると存外脆いというわけだ。

 

 

(´・ヮ・)<どうして拡張が出て内容が陳腐化する寸前に書くのか理解に苦しむね

Hearthstoneの戦い方(5)

CCG “Hearthstone” に関して気づいた事をその都度記録。


Hearthstoneの戦い方(4)

 

デッキの生態学

このゲームにはデッキやクラス間の相性がそれなりにある。例えばプリーストは敵の手下を始末したり洗脳するのが得意なので、ハンターやシャーマンなど手下を並べて戦うデッキにはかなり有利である。その一方、敵が殴り合いに付き合ってくれないと機能しないカードが多く、ウォリアーなど手下にあまり頼らないデッキは苦手だ。

全てに強いデッキは存在せず、誰もがそれなりに弱点を抱えている。そしてひとつのデッキタイプが興盛を極めるとそれに対抗するデッキタイプの割合がじわじわと増え、一方それを苦手とするデッキは徐々に減る……という食物連鎖の様な仕組みでプレイヤー全体の生態系がバランスを保っている。

なのだが、この生態は実は全体に一様ではなく、強さの階級ごとにある程度層構造を成している様に思われる。

 

ランク制

このゲームのランクマッチは塔を登る様な仕組みになっている。 最初は最下層の「25」から始まり、勝つと星が増え、負けると星が減る。星が一定数溜まるとひとつ上の「24」に行ける。これを繰り返して最終的に「1」やその上の「レジェンド」に行くのが目標である。ランクは月ごとにリセットされるのでその都度登らなくてはならない。

基本的に対戦相手は同じか近いランクから選ばれるので、階層を上がるためには「同じ層にいるプレイヤーに勝ち越す」必要がある。あたかも各階の番人を倒して進む冒険の様なものだ。

このメカニクスの帰結として次の様な現象が生ずる。例えばある階層でハンターが大流行したとしよう。するとその階層ではプリーストは非常に有利であり、技量が同等なら相性のお陰で簡単に勝ち越せるだろう。すると勝ち越したことの帰結としてプリースト使い達はその上の階層に行く。一方ハンター使い達はそれほど極端には勝ち越せないので、すぐ上の階層ではやや分布割合が減る。

この結果、ある階層ではハンターが多く、そのすぐ上の階層ではそれに強いプリーストが多いという風にランクごとに異なったデッキ生態分布を見せることがある。そしてそのプリースト階ではコントロールウォリアーが有利であり、すぐ上にウォリアー階が形成される可能性もあるわけだ。

プレイヤープール全体ではデッキの分布はバランスが保たれる。しかし「勝ち越したら上に行く」「同じランクで対戦する」というランクシステムの関係上、階層ごとの分布は必ずしも一様ではなくなる。

 

複数のデッキを使い分ける

オールラウンド型のデッキであれば相性の問題はそこまで深刻ではない。しかし得意な相手と苦手な相手がはっきり分かれるデッキの場合、分布上の偏りが思わぬ壁となって立ちはだかる場合がある。例えば3回に1回はプリーストに当たり、3ターン目にはDeath Lordが出て来るとしたら手練のハンターでも勝ち越しはなかなか難しいだろう。本来もっと上の実力があってもそこで足踏みをしてしまうわけだ。

複数のデッキを用意しておくと存外あっさりとこの壁を越えてしまうことがある。私は2015年7月のシーズンでランク5までプリーストで上がり、そこからコントロールデッキと当たる回数が増えて徐々に辛くなった。そこで今度はウォリアーを使ってランク2まで上がり、そこで再びアグロ系デッキが増えたのでプリーストに切り替えてレジェンドへ進んだ。ランク2〜レジェンドの範囲はハンターやズーが非常に多く、試合開始と同時に勝っている様なマッチングに多数恵まれたのである。

ひとつのデッキを極めることで相性の差を覆せるというのも事実だが、いくつかの道具を使い分ければ楽ができるというのも事実である。当面の目標が階層を上がることなら戦術のひとつとして利用するのも悪くないだろう。

Hearthstoneの戦い方(4)

CCG “Hearthstone” に関して気づいた事をその都度記録。


Hearthstoneの戦い方(3)

 

リーサルの一歩前

自分の手番で確実に相手を殺せる状態を「リーサル」と称する。例えば相手のHPが残り1で、盤面に自分の1/1ミニオンだけが存在したら殴り殺して終わりである。また一見そうと分からない複雑な盤面に、実は相手を殺しきる手順が隠されている事もある。常にリーサルを探し、見落とさない様にするのはプレイングの重要事項だ。

ではリーサルの「前」はどうだろうか? 相手を詰める1ターン前、「これに対処できなければリーサル=詰みだ」と相手にぶつける手は果たしてどれほど重要か? 今回は詰みの手前、王手について詳しく考察してみよう。

 

3種類の王手

そもそも王手=相手が何もせずにターンを終えれば自分側のリーサルになる手は次の3つに分けられる。

  • 盤上の戦力で次のターンに殺せる
  • 盤上の戦力で次のターンに殺せる上に、相手の盤上戦力ではそれを防げない
  • 手札など相手に知られていない戦力で次のターンに殺せる

これらを便宜上「チェック」「メイト」「フェイタル」とそれぞれ呼称しよう。これらは戦術上の意味も文脈も相当に異なるからだ。

 

チェック:死ぬのが嫌なら交換しろ

まず1つ目は「盤上の戦力で次のターンに殺せるが、相手の盤上戦力でそれを阻止できる」状態である。例えば相手のHPが残り3で、自分と相手の双方に3/3のミニオンがいたらチェックだ。相手にHPの回復や挑発持ちミニオンなどの防御手段が無ければ、自分の3/3をぶつけて相打ちにするしか助かる途はない。これが目的だ。つまりチェックをかけるのは、相手を追い詰めて本来ならしたくない様な不利な交換を強いるためである。

言い換えると、相手がチェックを外すための手が相手を苦しめるのでなければ全く意味がない。4/4のミニオンを盤上に出して「これを倒さなければ次で詰んでしまうぞ!」と脅したとしても、相手の側に4/5ミニオンがあって一方的に打ち取れるとしたらどうだろう? 相手を追い詰めるよりむしろ助ける事にならないだろうか? チェックの意義は相手に「不利になる手を仕方なく打たせる」事にある。有利になる手で外せるチェックは用をなさない。

ははは避けてみろ!>(  ;´。 `;)ノ三☆ いかん避けたら姫に当たる>(・ε・;)ξ・q・ ξ

 

メイト:対処できなくば投降せよ

2つ目は「盤上戦力で次のターンに殺すことができ、相手の盤上戦力ではそれを阻止できない」状態だ。例えば相手の残りHPが3で自分の側に3/3が2体、相手側に1体いるとしよう。相手はたとえミニオンのうち1体を相打ちにしても死を免れない。つまり自分の手札=盤外戦力で危機を乗り切らねばならず、回避手段が無ければ負けが確定する。

これは直接的に、そのターンでゲームに勝つ事を目的としている。相手はフロストノヴァやジャラクサスで1ターン延命できるかも知れないが、それらを持っていないかも知れない。メイトをかけたターンに相手が投了爆発四散する可能性は常に存在する。また何らかの対処手段で切り抜けても、それは相手にとって切り札を犠牲にした事を意味する。ファイアボール2枚で辛うじてこちらのラグナロスを焼き払った? よろしい、だがその後どうやって勝つ気かね?

( ・3・)( ・3・)っ=[ニニフ(  ;´。 `;) (・ε・ )(・ε・ )<もう逃げ場はないぞ

 

フェイタル:実はさっき王手だった

3つ目は「手札などの盤外戦力で次のターンに殺せる」形である。他の2つとは異なり、相手は王手をかけられた事自体をはっきりとは知覚できない。「もしかしたら手札に火力があるかも知れない」と予測して対処しなければ死んでしまうわけだ。言い換えればこれは「読み合い」であり、相手が読み違えればその時点でゲームは終わる。

この形が最も有効になるのは相手に最小の情報しか与えていない場合である。ラーヴァバーストとライトニングが2枚ずつあれば何もない所から16点のダメージが飛び出してくる。残りHP16の相手が「次でリーサルは無い」と読み間違ってそのままにしておく可能性はかなり高い。だが半分を小出しにしてHP8まで減らしてしまうと、次で殺し切れるだけの火力が手札にあると正しく推察してヒーローを回復するかも知れない。盤外の武器で殺すには情報を与えてはいけない。暗器はできるだけ隠しておいて、相手を殺し切れるターンに全て放つ方が突き刺さりやすいのである。

実はいっぱい隠し持っていたのだ>(  ;´。 `;)ノ三☆☆☆☆☆ Σ(・ε・;)

 

デッキの性格

3種のうちどの王手を主に活用するかによってデッキの性格は変わる。ウォーロックやハンターのズーデッキは徹底的に相手ヒーローを殴り、チェックをかけて対処に忙殺しつつ瞬間火力で勝負を決める。パラディンやプリーストは往々にして盤上の支配を固め、相手がどうしようもなくなるまで追い詰めて投了させる。メイジやローグには手札から瞬間的に大量の火力を生み出す手段がある。

ゴールが違えばそこまでの道のりも変わる。最終的にどんな形で勝つのか、大まかな展望を持っている事は作戦立案の助けになる。

 

( ・3・)<たまに1ターン目で投了する人いるよね 低い方のランクだけね>(・q・ )

Hearthstoneの戦い方(3)

CCG “Hearthstone” に関して始めて7週間ほどで気付いた事を記録。


Hearthstoneの戦い方(2)

構築戦ではデッキの組み方・選び方が重要で、実際のゲームが始まる前の「メタゲーム」でだいぶ戦績が変わる。この部分をどう攻略するかを考察してみよう。

Hearthstoneは(基本的には)バランスの取れたゲームである。一方的に強いデッキとか常に有効な構成は存在しない。実戦レベルのデッキにはどれも得意な相手・苦手な相手があり、他のプレイヤーがどんな構成を使っているかによって有効な手立てが変わる。

例えば死んでもカードを引いたりシークレットを展開できるミニオンはダメージによる除去には強いが洗脳に弱い。強力な大型ミニオンは殴り合いに強いがポリモーフなどの単体除去に弱い。他のプレイヤーがどんなカードを多く運用しているかで、ミニオンも呪文も、そしてデッキもだいぶ戦術価値が上下する。

すると誰でも思いつくのが「流行りのデッキに対策を立てよう」という事だ。例えば小さなミニオンを並べるズーデッキが流行っていたら全体除去や凍結を入れる、という具合である。だがこの考えは2つの理由で上手く行かない。

 

流行デッキはせいぜい3割

1つ目の理由は、たとえ大流行しているデッキタイプであってもその分布はせいぜい環境中の2割か3割に過ぎず、それだけに的を絞って対策しても全体的な勝率向上に繋がりにくいという事だ。最も多い3割のデッキに勝っても残りの7割に弱くては意味がない。流行デッキへの対策を立てるのは流行に追随するプレイヤーを罰するためではなく、環境を利用して自分自身の戦績を改善するためである。

この問題は試合記録を付けていると気づきやすい。「一番多く」「みなクローンの様で」「なす術なくやられてしまう」デッキは非常に印象に残りやすく、実際よりも分布を多く見積もってしまう。対策を考える前に、そもそも対策するだけの価値があるかどうか統計を見直すべきだ。

 

対策が難しいからこそ流行する

2つ目の理由は、そもそも簡単に対策できるデッキは流行しにくいという事である。アンダーテイカーとデスラトル系を大量に詰め込んだデッキが流行ったのは、除去などの手段で対策するのが非常に難しかったからだ。ゆえに「流行デッキを破る」という考えでデッキを構築すると不自然で非効率な形になりやすい。マスディスペルを入れておけばデスラトルを没収できるだろうが、果たしてその呪文は実戦投入できるだけの強さがあるか?

 

「何に強いか」でなく「何に弱いか」

ではどうすれば良いか。考えを逆にするのだ。「いる奴に強い」ではなく「いない奴に弱い」形で構築する。例えば2014年11月現在、構築環境では全体除去呪文がほとんど使われていない。直近の30戦でフレイムストライクを受けたのは1回だけである。ゆえにシャーマンのトーテムなど、全体除去耐性の低いミニオンがかなり運用しやすくなっている。

バランスの取れたゲームでは弱点を持つものはそれを贖うだけの長所も持っている。トーテムは全体除去に弱い代わりに単体除去に対して駒得になりやすく、手数という点でも優れている。結果シャーマンのグッドスタッフが高い勝率を維持できる。環境中に何があるか、何が流行しているかは誰にでも見える。何が無いかを見て作戦を考えよう。

 

( ・3・)<25勝6敗だもんね レジェンドに行っても同じこと言えんの?>(・q・ )

Hearthstoneの戦い方(2)

CCG “Hearthstone” に関して始めて4週間ほどで気付いた事を記録。


Hearthstoneの戦い方(1)

Hearthstoneの根幹は優位を積み重ねる事だが、これにはどうやら2つの側面がある。対称な優位非対称な優位である。前者は彼我のデッキに関係なく有利になり、後者はデッキが異なっている事によってのみ有利になる。構築に大きく影響する概念として以下に論じよう。

 

対称な優位

まず、自分と対戦相手のデッキがほぼ同一であると仮定しよう。似たようなマナカーブを持ち、同じ大きさのミニオンを大体同数入れている。この場合、リソースアドバンテージ(自分の2マナミニオンで相手の4マナミニオンを打ち取った)とテンポアドバンテージ(自分のミニオンだけが盤上にいる状態を1ターン維持して相手を殴った)はどちらも確実に戦況を有利にする。山札の中身に大きな差が無い以上、戦場の資源で勝る側が勝利により近いのである。これが全ての基礎である。

カードパワーを論ずる際は往々にして対称な優位をどれだけ得やすいかが焦点になる。例えば我らが大グモくんは同じ2マナの3/2ミニオンと相打ちになった後、なお1/1を1体余すことができる。ヘックスの呪文は3マナをはるかに上回るミニオンを無力化できる。こうしたカードは彼我の陣営が対称であれ非対称であれ優位を得やすいために使いやすく強力とされるわけだ。

 

非対称な優位

これに対して非対称な優位はもう少し込み入っている。例えばパラディンが2ターン目にヒーロー能力で1/1を召喚し、相手のメイジがヒーロー能力でそれを除去したとしよう。双方の能力を打ち消しあっただけで盤上は何も変わらない。それぞれカードを引いて1ターンが経過したのであり、時は両者に平等に流れている。

あるいは双方のヒーローが盤上に同じミニオン1体ずつ展開していて、それぞれ相手のミニオンを無視してヒーローを直接殴ったとしよう。これまた両者平等に血を流した形であり対称な優位はどちらにも発生していない。デッキ内容が同等であれば戦況はどちらにも傾いていない筈である。

しかし現実にはしばしば対戦相手のデッキ構成は非常に異なる。そしてそれゆえに平等な展開であっても一方が有利になる。戦線が膠着したまま1ターン経過して双方1枚のカードを引いたとしよう。このとき一方のデッキにだけマウンテンジャイアント(手札が多いとコストが下がる)が入っていたら、この膠着によって少しだけ有利になる。あるいは一方のデッキだけファイアボールやフロストボルトを満載していたら、双方のHPが15程度まで下がると俄然王手がかかる。双方が同じ利益や不利益を被った様に見えても、実はデッキ構成の違いから一方が有利になる場合がある。

 

デスラトル:対称優位の塊

アンダーテイカーおよびデスラトル持ちのミニオンを満載したデッキはメタの一角である。これらはコストあたりの戦闘力が高かったり除去耐性が強く、同マナの殴り合いで非常に有利である。2マナの大グモを2マナのフロストボルトで除去しても尚1/1の子グモが2体残る。3マナの邪教徒が3マナのブレードマスターと相打ちになっても尚+3点のHPを味方に遺せる。同格の取っ組み合いで明らかに強いのだ。

ところがこうした強さは非対称な戦場では十全に発揮されない。大グモが除去されずに残っても、相手のHPを1点ずつ削る以外に大した事はできぬ。ナイフジャグラーなど攻撃的なミニオンを満載したデッキに比べ、どうしても相手に大きなミニオンを出すまでの時間を与えてしまう弱点がある。

デスラトル系は言わば同等のマナカーブを持ったデッキを殺す刺客である。それは「戦車を破壊する戦車」とか「投げを吸い込む投げ」とか「ニンジャを殺すニンジャ」みたいなもので、ジャンケンの中のサブカテゴリである。自身が属するカテゴリに対しては格段に強く、代わりに他のカテゴリにやや弱い。既にラダーではデスラトルデッキに対抗する低速デッキが流行しつつある。強力だが無敵ではないのである。

ただしアリーナではやや様相が異なる。こちらは強力な大型ミニオンがそもそも出て来にくいため、必然的に小〜中ミニオンの殴り合いになる。デスラトルおよび対称優位を得やすいカードは大活躍だ。

 

まとめ

どんなゲームであれ、上達の秘訣は失敗から学ぶことだ。そして失敗の原因をできるだけ細かく特定するのが何より重要である。「なんとなく決め手を欠いて負けた」より「3ターン目にアンダーテイカーを処理できないのにむざむざミニオンを差し出してしまった」の方が経験になる。勝ったにせよ負けたにせよ、それが対称な優位(ミニオンのやりとりで得をした)の産物か、それとも非対称な優位(重いカードを活かせる後半までもつれ込んだ)の結果であるかは区別する必要がある。

 

( ・3・)<いまランク6なんだ それなりー>(・q・ )

Hearthstoneの戦い方(1)

CCG “Hearthstone” に関して始めて2週間ほどで気付いた事を記録。


Hearthstoneはデッキを持ち寄って2人で戦うオンラインカードゲームである。デッキの組み方もさることながらプレイングが非常に重要である。この部分に関していくつかの覚え書きをしておく。

 

優位を積み重ねる

2人対戦ゲームの多くと同様、このゲームも小さな優位の積み重ねで勝利に至る。小さな駒で大きな駒を討ち取ったとか、相手の駒を只で取ったという様な「得」が積もり積もって勝敗を決する。ミクロな段階における工夫が最終的に大きな違いになる。

優位には2種類ある。仮にこれをリソースアドバンテージとテンポアドバンテージと呼ぼう。前者はいわゆる「駒得」であり、自分より相手に沢山のものを失わせて獲得する。例えば2マナの武器カード1枚を使って敵のミニオン(駒)2体を倒すとリソースアドバンテージが得られる。後者は自分のミニオンだけが盤上に存在している「時間」である。その間に相手のヒーローを一方的に殴ってHPを減らせる。

最終的な勝利はテンポアドバンテージを取る事で得られるが、そこに至る道筋は複数ある。それがHearthstoneを興味深い物にしている中核である。

 

アグロ:先に駒得、後で殴る

典型的なデッキの一類型がアグロである。軽量のミニオンを多く入れておき、早い段階でフィールドに展開する。それだけでなく武器や特殊能力付きミニオンを利用して積極的に駒得を狙うのが特徴である。敵が2体のミニオンを展開したら、自分は武器カード1枚を使ってその両方を討ち取り、更に1体のミニオンを展開する。こうすると盤上は自分のミニオンだけになるので敵のヒーローを勇んで殴り倒す。

「先にリソースアドバンテージを取り、それを利用してテンポアドバンテージを得る」これが基本原理だ。ローグはこの戦術の名人で敵ミニオンを片付けつつ自分のミニオンを展開できる。

 

コントロール:先に時間稼ぎ、後に駒得

アグロと対照的な類型がコントロールデッキである。コストの重い強力なカードは1枚で弱いカード複数枚と相殺できる物が多い。そうした巨砲を多数入れておき、使えるだけのマナが貯まる後半まで時間を稼ぐのである。

重い呪文やミニオンは軽い物に比べてコスト効率に優れる。Aのデッキには軽いミニオン、Bのデッキには重いミニオンが多く含まれているとすると、時間が経てば経つほどBは有利になる。挑発持ちを挟んで1ターン睨み合うだけで既に「得」をするのだ。

メイジはコントロール戦術の代表的な使い手である。フロストノヴァは敵全体を凍らせて1ターン動けなくする。カード1枚を使うのに敵ミニオンを破壊するわけではないから「駒損」であるが、代わりに敵のテンポアドバンテージを失わせている。一方的に殴られる時間が減るという事は殴り倒されるまでの時間が延びるという事であり、フレイムストライクなど盤面をまとめて片付けるカードを使うまでの時間が稼げるわけだ。凍結、アイスバリア、幻影の盾など「駒損になるが時間を稼げる」ギミックがメイジにはとても豊富に揃っている。

「まず相手のテンポアドバンテージを失わせ、後でまとめて駒を取る」これがコントロールの考え方である。

 

優位をどう計量するか

よい指し手とは優位を得る手である。では2種類のアドバンテージをどう計り判断すべきか。まずリソースアドバンテージは

  • カード1枚につき2点
  • マナコスト1につき1点

で考えるとほぼ近似値になる。これはチェスで駒の価値をナイトは3点ルークは5点と考えるのに似ている。0マナのミニオンカード「ウィスプ」と、パラディンがカード無しで2マナで生成できる兵士はどちらも2点の価値がある。ちょうど能力も同等である。これをメイジの2マナヒーロー能力で焼き殺すと2点と2点で等価交換になる。

1対1交換でも相手の方が点数が高ければ駒得である。例えば兵士が1マナのマーロックと相打ちになれば2点と3点の交換で1点の得だ。ポーン1個とナイト1個を交換したら駒得になるのと同じである。

特殊能力持ちのミニオンは本体と能力の価値を分割して考える。例えば1マナの軍曹を出して兵士を強化し、敵の熊(3マナ)と相打ちなったとしよう。後に残るのは能力を使い終わって2/1バニラと化した軍曹である。これは大体0.5マナ程度の強さだと考えると2.5点に相当する。残りの0.5点が能力のコストである。2点の兵士と0.5点の能力を合わせて5点の熊を討ち取ったから2.5点の駒得となる。ちょうどその駒得分の2/1ミニオンが盤上に残るという形でリソースアドバンテージを手にするわけだ。

点数計算に関しての補足

ミニオンや武器などの点数は「取得原価」で計算する。双方が同じだけのマナとドローを得ている以上、リソースのやり取りでどちらが優勢になっているかを判断するのにこれが便利だからである。1マナのミニオンは常にカード1枚+1マナで3点である。能力を放出した後の絞りカスに2.5点程度の価値があるとすれば、能力の取得原価は強さに関係なく0.5点である。そもそも能力付きミニオンは「駒」と「呪文」の抱き合わせ販売で安くなっており、両方を活かせる局面で使えばほぼ自動的にリソースアドバンテージを得られる仕組みである。これは能力を活かせない局面だとバニラより損をするというリスクと引き換えになっている。

 

テンポアドバンテージの計量

もう一方のテンポアドバンテージはヒーローのHPで計る。自分のミニオンを一方的に展開して敵ヒーローを5点分殴ったら5点のアドバンテージと数える。ただしこの「点」はリソースアドバンテージの点とは換算不能である。5点火力の呪文で相手の3マナクリーチャーを片付けるのと相手ヒーローを直接狙うのとどちらが良いかは盤面や残りのHPによって常に変わる。ゆえにこの2つの優位は本質的に別の資源である。

自分のHPを減らす行動(武器で殴る・インプを召還する等)は相手にテンポアドバンテージを与えるのと同じである。攻撃力3のミニオンを1ターン放置するのと自分のHPを3点犠牲にするのは同じ結果をもたらすからだ。逆にHPを回復したり装甲を上げるのは敵のテンポアドバンテージを相殺する形になる。

 

アドバンテージ間のトレードオフ

武器は往々にして、敵にテンポアドバンテージを与えるのと引き換えに多大なリソースアドバンテージを自分にもたらす。挑発持ちミニオンは価値の高いミニオンを守る(敵に駒得をさせない)ほか、敵のテンポアドバンテージを失わせる側面もある。

リーパーノームは1マナ2/1と2.5点相当の力しか無いが敵ヒーローにダメージを与えて2点分のテンポアドバンテージを作り出す。ゾンビチャウは1マナ2/3と4点近い力を持つがテンポアドバンテージを5点失わせる。テンポとリソースのどちらを重視するか、どの割合で交換するかはこのゲームで最も柔軟な判断を要する部分であり一概に正答を示す事は難しいが、「盤面の掃除に拘り過ぎてHPを削られて頓死した」といった状況が生じ得る事は念頭に置くべきである。

 

まとめ

このゲームは2種類の優位を積み重ねたり相互に交換して最終的に勝つ。どちらかの資源で一方的に損をしていたり、割に合わない比率で両者を交換していたら何かが間違っている可能性が高い。プレイングの継続的改善とデッキ構築の補助線としてこれらの基本原理を記しておく。後で上達したらまた見直す。

 

( ・3・)<始めたばっかりの頃にしか書けない事ってあるよね 後で見直すと気恥ずかしいよね>(・q・ )