手慰みの報酬

前回のコラムではゲームの本質である誘引について述べた。今回はもう一つの柱である報奨について考察しよう。

ゲームは動作とそれに対する誘引および報奨の総体である。ゲームはまず動作によって表される。「撃つ」ゲームだったり「跳ねる」ゲームだったり「揃える」ゲームだったりする。撃つゲームには撃ちたくなるゾンビが登場し、撃てば撃つほどスコアや札束が手に入る。揃えるゲームは揃えたくなる絵柄の札や牌を使い、揃え方によって点を取る。

動作と誘引と報奨が完璧に一致している時、ユーザ体験は黄金のピラミッドを成す。何かを撃つゲームを買ったら撃ちたくなる物が出て来て、その上報奨まで得られるとなれば。

報奨系はゲームメカニクスそれ自体と密着している。「ゲームバランスが悪い」というのは報奨系が崩れているという事である。例えば戦略ゲームで戦闘機が異様に強いとすれば、それはひたすら戦闘機だけを生産する事を報奨している。しかし戦略ゲームは慎重に計画を練って資源を配分する遊びである。故に報奨系はそうした深謀遠慮に報いるべきであり、頭を使わない連続クリックに良い結果を与えてはいけない。「動作」と「報奨」の不一致こそゲームバランスの穴である。

プレイヤーは報奨系の命令に逆らう事ができない。戦闘機だけを作る事が勝利への最短経路であれば、それがどれほど退屈であってもプレイヤーはそうし続ける。そしてしばらくの後にゲーム自体を止める。

報奨系は楽しい行動を報奨しなくてはならない。ゲーム自体が依って立つ行動、ゲームが誘引する行動をである。最も楽しい行動が最も報われるのが良いゲームバランスである。

楽しい仕事、辛い仕事

だいぶ以前、祖母の家にインターネット回線を引いた時の事である。祖母は様々な情報ページを廻り、大いに感心し、そしてこう言った。「誰がこれを入れてるの?」

一瞬答えに窮してしまった。確かに言われてみればどこの暇人だ?読み手から金を徴収するでもなく、経費まで自腹でせっせとWeb空間に情報を上げている。しかもそういう暇人が何百万と存在するとは。

 

それから何年か経った。筆者は炒飯作りに凝り始めた。作って食べる所までは良いが、その後の洗い物があまり楽しくない。中華鍋についたコゲを金たわしでこするのは楽しいが、皿をスポンジでなで回すのは楽しくない。

 

それからまたしばらく経った。Unity 3Dという玩具を手にした筆者はこんな物を作った。

http://spa-game.com/Unity3D/Coin.html

ただコインを積むだけの遊びである。得点もゴールも無くゲームとすら言えぬ。だが何故か楽しいのである。一体楽しさとは何ぞや。何が人間をPCに向かわせShiftキーを叩かせるのか。

 

「誘引」という仮説が上記の疑問を全て解決する。コインは積む事を求めている。ホモサピエンスはコインを見ると積みたくなる。「コイン」が「積む事」を誘引するのである。

人間は様々な問題解決手段を持っている。知識や技能、道具などである。そしてそれに対応した問題が提示されると適用したくなるのだ。ねじ回しを持っていればねじを回したくなる。鋏を持っていて点線の付いた紙があれば切りたくなる。縦長のブロックがあれば縦穴に入れたくなる。問題が手段を誘引するのだ。

中華鍋と金たわしは完璧な調和を成している。ゆえに後者で前者をこするのは楽しい。鍋がたわしを誘引するのだ。皿とスポンジはそれほど調和しておらず、誘引力が弱いので楽しくない。皿をなで回して泡だらけにする事には必然性が無い。本能が非効率を察知しているのだ。

Wikiという仕組みの偉大さはその機能ゆえではない。書く事を誘引する所にある。「まだ書かれていない項目」は埋めるべき空白として提示される。データの誤りや漏れも修正を誘引する。Wikiは書く事を誘引するが故に、無償で大量の記事を集める事ができるのだ。そしてWebそれ自体もまた、何かを公開せよと誘引している。

 

動機付けの本質は報酬ではない。誰かの役に立つ事でもない。問題と問題解決手段がピッタリ噛み合っている事だ。調和こそ働きかけを引き寄せる物である。誘引される仕事は楽しく、そうでない仕事は辛い。ゲームの楽しさもまた、「解決すべき問題」としてプレイヤーを誘引する所にある。

ゲームの代金とは

iOSアプリ市場において、有料アドオン付き無料アプリは有料アプリより遥かに収益が高いという話が以下に紹介されている。

http://www.sirlin.net/blog/2012/3/6/gdc-2012-the-day-before-day-1.html

ゲームに金を払う方法は色々ある。店に行ってパッケージを買うのも楽しいが、他の方法も考察してみよう。

 

1.遊ぶ度に払う

ビデオゲームの誉れ高き伝統はアーケード筐体である。コインを1つ入れると1回遊べる。実にシンプルだ。この方式の良い所は、顧客の受ける利益と支払う金額とが釣り合うという点だ。沢山遊べば沢山払う。少し遊べば少し払う。とんでもなく駄目なゲームに当たっても、損はコイン1個である。短所は遊ぶ度に少額の決済が必要になる所だ。ゆえに買い手と売り手が金銭をやり取りできる場所でしか成立しない。

 

2.ずっと遊ぶ権利を買う

パッケージ入りのゲームはこのパターンである。店に行って、1回代金を支払い、その後はずっと遊べる。この方式なら何度も決済をしなくて良い。インターネットの力を借りずとも、買い手と売り手が遠く離れた場所に存在できる。接触するのは最初の1回だけで宜しい。

問題はいかさまに弱い点である。この方式だと買い手が中身を知る前に決済を終えるため、ゴミの塊をそれらしい箱に入れて売ってしまう事が可能になる。そして実際そうなった。現在は情報の流通が増えて問題が緩和されたとは言え、基本的にはレモン市場である。

 

3.一定期間遊ぶ権利を買う

1と2の中間形態である。いわゆる月額課金。本来はオンラインゲームのサーバ経費として徴収されたのだが、後にゲーム自体の代金もここに含められる場合が増えた。ただ、複数の月額課金を同時に維持すると無駄に金がかかる。

 

4.もっと遊ぶ為に払う

Great Little War Gameを制覇した?では追加マップをどうぞ。85円です。追加のミッションやキャラクターに代金を払うDLCはあちこちで見られる。体験版もある意味ではこのカテゴリに入る。体験版はステージ2までしか遊べないとしたら、ステージ3以降が有料コンテンツになっているのと同じ事である。

 

5.ゲロを片付ける為に払う

こんなゲームセンターを考えてみよう。コインを入れる必要は無く、無料で好きなだけ台を利用できる。ただし椅子にはゲロがぶちまけてあり座ると尻が濡れる。店に金を払うと乾いた椅子と取り替えてくれる。

馬鹿馬鹿しいと思うかも知れないが、オンラインゲームやモバイルアプリでは似た様な事が起きている。アバターの移動速度が耐えられない程遅く、金を払うとようやくまともに歩き出す。インターフェイスに必須の機能が無く、金を払うと使いやすい版に変わる。画面の3分の1を広告が埋めており、金を払うと消えてくれる。

問題点は明白だ。我々はゲロまみれの椅子に座って「ああ、良い椅子とゲームだね!ゲロが無ければもっと素敵に違いない、金を払うよ!」と言うのだろうか?

 

6.勝つ為に払う

いわゆる「500円で宝箱を開けると0.2%の確率でレア素材ゼニウムが出ます!それを合成すると0.008%の確率で名刀銭金丸+69が出来上がります!」の類。魔剣を手に入れたら貧乏なプレイヤーをバッサバッサと斬るのである。これは要するに全てのプレイヤーから勝率を少しずつ税金として徴収し、専売公社を通じて売っているのと同じだ。「裕福なプレイヤーに負ける」「金を払う」という2通りの支払い形態があるので様々なニーズに応えられる。ゲームの競技性を腐らせるのが問題点。

 

これ以外にも蒐集物を揃えるとか、友達からの社会的圧力に応えるとか、色々な理由で支払いをする事がある。しかしそれらはゲームの本質からはやや離れてしまうのでここでは論じない。どの方式にせよゲーム体験に対して支払いをしているのは同じだが、それをどの様に計量するかが異なるのである。

 

( ・3・)<まあ誰かからプレゼントして貰うのが一番楽しいんですけどね

ダイススレイヤー拡張ルール

ゲーム開始時に1個の「ワイルドダイス」が与えられる。これは場のダイスの代わりにストックに加える事ができ、加える時点で任意の目にできる。

ワイルドダイスは使うと無くなる。

100点、300点、600点、1000点、1500点…の区切りごとにワイルドダイスが1つ追加される。

ダイスが9個になるとゲームオーバー。つまり手番終了時に7個あると終了。

プロトタイプ:イモータルアリーナ

3つの駒を動かして戦う2人用ボードゲーム。
5点先取か3点差で勝ち。

 

盤面について:

・双方が移動できる空間を持ち、それぞれ前列/中列/後列に分かれている。

・相手の空間に入って行く事はできない。

 

開始処理:

・先行を決める。

・駒を全て中列に置く。

 

ターン処理:

・動かす駒を1つ選ぶ。前のターンに動かした駒は不可。

・駒の持つ行動から1つ選ぶ。

・動かせる駒があれば動かさなくてはならない。

・どの駒も動かせない場合、何もせずに手番が終わる。

 

終了処理:

・どちらかが5点に達するか3点差を付ければ勝ち。

 

射撃ルール:

・射撃は射程内の敵を1体選び、命中判定をして成功すればストライクカウントを与える。

・射程は3つ先の列まで。自分の中列から相手の中列、前列から後列、後列から前列まで届く。

・命中判定は6面ダイスを2つ振り、どちらかが4以上なら成功。つまり75%。

 

格闘ルール:

・格闘の射程は2つ先まで。前列から中列、中列から前列まで届く。

・ダイスを3個振り、相手のストライクカウント以下の目が1つでも出れば成功。相手は倒れる。

・格闘の対象が重装甲を持つ場合、3個でなく2個振る。

 

致死砲撃ルール:

・射撃と同様の射程を持つが、格闘と同様にダイスを3つ振り致死判定。

・重装甲なら2つ振る。

 

乱戦ルール:

・相手の倒れていない駒が前列にいる場合、自分の前列にいる駒は相手の中列/後列を攻撃できない。

 

死亡ルール:

・駒が倒れるとストライクと気力を全て失う。

・倒れた駒を動かす事はできない。また攻撃の対象にもならない。

・相手の駒を倒すごとに得点+1。

 

蘇生ルール:

・他の駒を使って倒れた駒を復帰させる事ができる。

・駒はその場で復帰し、特別のペナルティは無い。

 

圧倒ルール:

・敵の倒れていない駒が1つも前列に無い状態で、自分の倒れていない駒3つを前列に移動させると「圧倒」が発生する。

・これにより得点+2。

・その後自分の駒全てが中列に戻る。

 

気力ルール:

・一部の行動は気力を高める。これは行動の成否に関わらず獲得される。

・気力の上限は2。これ以上の増加は無視される。

 

速攻ルール:

・速攻属性の付いた行動を選んだ場合、次のターンに続けてその駒を動かしてもよい。

 

拘束ルール:

・敵を拘束すると、その駒は次のターンに動かせなくなる。

 

治癒ルール:

・「治癒」属性の行動を選ぶと自然治癒状態になる。

・自然治癒状態の駒を動かすと、それに付いているストライクが全て無くなる。

・一度動かすか倒れると自然治癒状態は解除される。

 

 

*駒一覧

戦士:

・重装甲

・スプリント:1列前進。速攻。

・後退:1列後退。治癒。

・格闘:格闘攻撃。

・蘇生:1列前進するか後退してもよい。その後同じ列にいる味方を蘇生。

 

炎使い:

・前進:1列前進。

・後退:1列後退。治癒。

・火球:気力+1。射撃。

・業火:気力2消費。致死砲撃。

・蘇生:1列前進するか後退してもよい。その後同じ列にいる味方を蘇生。

 

氷使い:

・前進:1列前進。

・後退:1列後退。治癒。

・冷気:射撃。命中すれば拘束。

・蘇生:1列前進するか後退してもよい。その後同じ列にいる味方を蘇生。

キルゾーン プロトタイプ2

押し寄せる敵をカラテで倒し続ける一人用カードゲーム。
ゲームオーバー時の得点を競う。

 

コンポーネント:

・1・2・3のカード各4枚

・キャラクターカード

 

開始処理:

・使用するキャラクターカードを選ぶ。

・カウンターを用意し、耐久力・血中カラテをそれぞれキャラクターの初期値に設定。

・経験値を0に設定。

・ウェーブを1に設定。

・数字カードをよく切って山を積む。

 

ターン処理:

・山から1枚めくり場に置く。

・キャラクターカードに定義された行動から1つ選ぶ。

・その後、場に敵が2体以上いれば自分の耐久力を1減らす。

 

戦闘処理:

・カードの数字は耐久力を表し、どれだけのダメージを与えれば倒れるかである。

・倒れた敵は殺害ゾーンに置かれる。

 

ウェーブ処理:

・決められた数の敵を殺害ゾーンに置くとウェーブ終了。

・必要殺害数はウェーブ番号+1である。つまり第1ウェーブは2体倒せば終了。

・殺害ゾーンに置かれた敵の数字を合計し、経験値に加算。

・経験値が一定以上になると新たな能力を獲得する。

・場と殺害ゾーンのカードを全て捨て札置き場に移す。

・耐久力と血中カラテ濃度をキャラクター能力値に戻す。

・ウェーブ番号を1増やして次のウェーブへ。

 

終了処理:

・耐久力が0になるとゲームオーバー。

・獲得した経験値が得点。

 

 

キャラクター:ニンジャスレイヤー

・攻撃:場の敵1体を選びダメージ1

・チャドー呼吸:カラテ+1

・フックロープ:カラテ1消費。敵1体を拘束。拘束された敵は攻撃に参加しない

・カイシャク:カラテ1消費。敵1体を攻撃。これで止めを刺すと場の敵全てにダメージ1。二次ダメージで止めを刺した敵は捨て札置き場へ行く。

・耐久力3

・血中カラテ濃度1

・経験値3でカラテ+1

・経験値9で耐久力+1

・経験値20でインタビューを習得:カラテ1消費。使用してもターンが終了しない(続けて行動できる)。拘束状態の敵1体に3のダメージ。

・経験値40で耐久力+1

・経験値72でタツマキケンを習得:カラテ1消費。耐久力1消費。使用してもターンが終了しない。敵1体に1のダメージ。

・経験値128でカラテ+1

・経験値200で耐久力+1

狐返し:複合ルール

狐返しと狐めくりを組み合わせて最後の一人になるまで続ける場合のルール。

 

・4人の狐返しで1人が脱落したらそのまま続行。

・次の初手は返しを宣言したプレイヤーから。そのプレイヤーが脱落していれば順繰りに次のプレイヤー。

・2人になったら狐めくりに移行。上と同様に初手番を決める。

・狐めくりで負けると魂を1つ失う。

・魂を失ったプレイヤーが次の初手番を担当。

・最後の一人になるまで続ける。

 

勝者は狐の王。

プロトタイプ:対戦ダイススレイヤー

6面ダイスを使った2人用対戦パズルゲーム。
相手の場を溢れさせるか先に100点取れば勝ち。

 

場に関する前提:

・2人のプレイヤーがそれぞれ「場」「ストック」「猶予ゾーン」を持つ。

 

開始処理:

・双方ダイスを3つ振る。合計数の大きい方が先手。

・同数なら振り直し。

・その3つをそのままそれぞれの場に置く。

 

ターン処理:

・交互に手番を行い、自分か相手の場から1つ取りストックに加える。

・ストックは3つまで。それを超えたら古い方から取り除く。

・3つのストックが全て同じ数字になったら両隣の数字を全て自分の場から取り除く。例えば222なら1と3が全て消える。

・3つのストックが続き数字でも同様。345なら2と6が消える。

・続き数字はどの順番でも良い。534は345と同じに扱われる。

・一度に消した数の2乗が自分の得点に加算される。

 

攻撃に関するルール:

・自分の場のダイスを消す事で相手にダイスを送り込める。

・自分の猶予ゾーンにダイスが無い場合、一度に消した数-1個のダイスを振って相手の猶予ゾーンに置く。

・例えば3個同時に消すと2個振って相手の猶予ゾーンに置く。

・自分の猶予ゾーンにダイスがある場合、消した数だけそこから取り除く(相殺)。

・取り除くダイスは自由に選んで良い。

・例えば自分の猶予ゾーンに2個ある時に1個消すと、2個のうち好きな方を取り除く。

・猶予ゾーンにあるダイスの数以上を一度に消した場合、猶予ゾーンのダイスを全て取り除き、差分の個数を振って相手の猶予ゾーンに置く。

・例えば自分の猶予ゾーンに2個ある時に5個同時に消すと、自分の猶予ゾーンにあるダイスを全て取り除いた上に、3個振って相手の猶予ゾーンに置く。

・自分の手番に1つもダイスを消せないと、猶予ゾーンにあるダイスが場に移動して来る。

 

終了条件:

・先に100点に達すると勝利。

・自分の手番終了時点で場にダイスが10個以上あると敗北。