買ったけどルール分からんという人向けの文脈つき説明
経緯
この工房で作っているゲームは全て「ゲーマーズゲーム」である。つまりゲームが大好きで週に2本は新しいボードゲームを開封して週末はゲーム会に出掛けるような人向けの製品である。取り扱い説明も当然それに準じたもので、普段ゲームをする人なら分かるように記述している。
ところが”Not My Fault!”はものの弾みでゲームをしない人にまで売れてしまったので、急遽解説を加えることになった。
ブラフゲームというジャンル
まず世の中には「ブラフゲーム」というものがある。ブラフとは要するにハッタリである。例えば本当は3のカードしか持っていないのにあたかも5のカードがあるように吹聴して、相手がまんまとそれに騙されたら勝ち。見破られてしまったら負け。巧妙に嘘をつく技を競うのである。
そして対戦相手はこれに対して「お前は嘘をついているな?」と疑義をかけることができる。これを「ダウト」とか「チャレンジ」と称する。ダウトがかかったら、果たして本当に嘘をついていたのかを全員の前で調べる。本当に嘘をついていたのなら、その嘘つき野郎は駒を失ったりゲームから脱落したり何か損をする。だから毎回嘘ばかりついていると毎回ダウトされてしまう。時々は本当のことも言ってもっともらしさを保たなくてはいけない。
また「ダウト」をかける側も少しは危険がなくてはいけない。もしダウトが成功して嘘を見破ったら相手を負かし、嘘ではなかった場合はそのまま何事もなく進行するのだと、毎回毎回無闇にダウトをかけるのが得策になってしまうからだ。だから大抵のゲームでは、ダウトをかけて相手が嘘をついていなかった場合、そのダウトをかけた本人が損をするのである。間違って人を嘘つき呼ばわりしてはいけないのだ。
「チャオチャオ」とか「フィブフィブ」とか「ライアーダイス」とか世の中には色々なブラフゲームがある。どれも基本構造はだいたい共通である。カードを引いたりダイスを振ったりして、それが何の数字であるかを適当に吹聴し、対戦相手はそれが嘘か本当か見破ろうと四苦八苦する。
Not My Fault!
Not My Fault! はこうしたブラフゲームの伝統を汲んだ作品である。カードを引いて、数字を見て、「俺は5以上のカードを伏せたぞ」とか適当な事を宣言する。そして次の人はそれが本当かどうか考える。嘘を見破られたら負けだ。
ただし独自の特徴が2つある。1つ目は宣言が累積的であることだ。1人目は「俺は5以上を伏せたぞ!」と宣言するが、2人目は「俺と前の奴とで合計8以上を伏せたぞ」とか言わなくてはいけない。そして3人目は「俺と前の2人と合わせて12以上はある」という具合である。
この時、前の連中が実際にいくつのカードを伏せたのか見ることはできない。だから例えば、1人目が「俺は5だ」と言ったのを信じた上で、自分のカードの数字をそれに足し合わせて「8だ」と宣言する。だからあなたが嘘をついていなくても結果的に嘘になってしまうことがある。1人目の伏せたカードが本当は「0」で、あなたのカードが「3」だったら、合計数値は3でしかない。嘘を見破れないと自分が嘘つきになってしまうのである。
2つ目の特徴はある程度高い数を宣言しなくてはいけないことだ。このゲームでは、過大申告(実際に伏せられたよりも大きな数を宣言する)は全て嘘として扱われるが、過小申告(実際に伏せられたよりも小さな数)は全く問題がない。だから毎回できるだけ小さな数字を宣言していれば安全である。
そうなってしまうとゲームの動きが鈍くなるので、5,8,12,17,23,30という特定の数値に色を付けて「次はここまで進め」という義務を課している。その義務を果たさない様な宣言は1ラウンド(誰かが次にダウトをかけるまでの間)に1回しかできない。だから過大申告にならない様に気をつけつつ、課せられたノルマも達成する様に頑張りつつ、一体誰が大ボラを吹いているのか見張っていなくてはならない。これが現実世界のシステム開発の風景に似ていることからNMFはIT開発会社が舞台に設定されている。
以上を踏まえたルール説明
まず誰がゲームに参加するか決める。最少は2人、最多で8人である。参加者にはそれぞれ片側が黄色い「戒告」カードを1枚ずつ配る。これは義務を果たさない宣言をする権利をすでに使ったかどうかを記録するためのカードである。最初は灰色の面が上だ。
卓をぐるりと囲む様に適当に座る。そうしたらジャンケンとか年の若い順とかで誰が最初の番になるか決める。0から6の数字が書いてあるカードは全部を裏にしてよく混ぜ、皆が取りやすい場所に積んでおく。これを山札と称する。両面が赤い「停職」カードはそれとは別にして取りやすい場所にまとめておく。
最後に0から30の数字が書いてあるカードを皆から見える場所に置き、大きな矢印の描いてあるカードで「0」を指し示す様に置く。これは宣言された数字を示すためのカードである。
これでゲームの準備ができた。
このゲームでは、時計回りに1人ずつ順番が回ってくる。最初の番の者はまず山札からカードを引く。それを自分だけで見て、裏向きに置いて、それがいくつ以上の数字か宣言する。1以上ならいくつでもよい。その数まで矢印を進めて全員に示す。この時、黒いマス(5,8,12,17,23,30)以外の数字を宣言したら、自分の戒告カードを裏返して黄色い面を上にする。「白い場所に止まる権利をもう使ってしまった」と示すのだ。
2番目以降の者は、順番が来たら「自分もカードを引く」か「前の奴にいちゃもんを付ける」かどちらか好きな方をする。両方はできない。カードを引く場合は、同じ様に山から引いて、自分だけで見て、裏向きに置く。そしてそれまでに伏せられたカード全部でいくつ以上かを宣言する。前の宣言よりも大きくしなくてはいけない。
いちゃもんを付ける場合は「監査!」と叫ぶ。これは「お前は嘘をついているな!今から検査してやる!」という意味である。それまでに伏せられたカードを全て表向きにして数字を足し合わせる。前の者の宣言よりも小さければ、前の者が停職(赤いカード)を取らされる。宣言と同じまたはそれより大きければ、監査と叫んだ者が停職カードを取らされる。
どちらの場合でもここで一旦区切りがついてリセットされる。矢印の数値は0に戻る。戒告(黄色いカード)は全て灰色の面に戻る。使った数字カードは全部まとめて捨て札置き場に置く。そして監査と叫んだ者の番から再開する。
停職カードを2枚取らされた者はゲームに負ける。残り全員の勝ちで終了である。
カードを伏せた後に「30」を宣言した場合は少し特殊な処理をする。その場ですぐに全ての伏せられたカードを表にして数字を足し合わせる。それが30以上であれば、30を宣言した者が直ちにゲームに勝利する。その1人が勝ち、残り全員が負けで終了である。30未満なら宣言した者が停職カードを取らされ、監査の場合と同じ様に仕切り直して続ける。順番は宣言した者の次の者からになる。
ゲームが進んで山札が切れてしまったら、それまでまとめておいた捨て札を再び裏向きにして混ぜ合わせ山札を作る。
5人以上で遊ぶ時は「エクストリームルール」を推奨する。停職カードを1枚取らされた者はゲームから脱落する。残りの者でゲームを続け、誰かが最後の1人になるか、30宣言で1人勝ちしたら決着となる。
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